ちょっと仕事が忙しく、読んだり考えたりしていることをアウトプットできない日々。ただ、以下のことはメモ代わりに書いておきます。
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一週間前の話。夜中、TBSラジオ「アシタノカレッジ」を聴きながら走っていると、澤田大樹記者がすごいニュースが飛びこんできたと言いました。
荒井勝喜首相秘書が3日夜、記者団の取材に「僕だって見るのも嫌だ。隣に住んでいるのもちょっと嫌だ」などと差別的な発言をした。[略]荒井氏は「社会に与える影響が大きい。マイナスだ。秘書官室もみんな反対する」などと発言したほか、「人権や価値観は尊重するが、同性婚を認めたら国を捨てる人が出てくる」との趣旨の言及もあった。(→毎日新聞)
この問題発言が、当事者に与えた心理的ダメージを想像してみてください。
荒井氏は「もちろん人権や価値観は尊重するが、心の底では嫌だ。同性婚を認めたら、国を捨てる人が出てくる」とも言ったそうです。「同性婚を認める国はイヤだ〜」と日本を捨てて、どこに行きますか。先進国は軒並み同性婚を認めています。近くでは、中国、韓国、東南アジア、ロシアあたりですか。
2月1日の衆院予算委で立民・西村智奈美議員が質問したとき、岸田文雄首相は「(同性婚を認めると)日本の国民全てが大きな関わりを持つ問題でもある。全ての国民にとっても家族観や価値観、社会が変わってしまう問題だ」と答弁しました。「政治家は社会を良く変えるのが仕事だろ」とツッコんだあと、私はあることに気づいてゾッとしました。
「岸田氏は、同性婚を認めると社会が改悪されると信じているんだ!?」
岸田氏は、性的マイノリティ攻撃やミソジニー発言で知られる杉田水脈を政務官に登用したくらいですから、もともと人権に対する感度が低いのです。荒井氏は、岸田氏と秘書官全員が共通して抱く本音を素直に語っただけではないでしょうか。内心、「記者のみなさんもそうだろ」と思いながらしゃべっていたのかもしれません。
すぐさま荒井氏は発言を撤回します。「先ほど(オフレコの)囲み(取材)で、やや誤解を与えるような表現をしまして、大変申し訳ありませんでした」と言ったそうですが、「やや誤解」って何ですか? 誰も誤解などしてません。この人は差別主義者です。
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荒井氏はは55歳だから、私と同世代です。
私だって以前は、ゲイ、レズビアンに対する差別意識を持っていました。社会全体が共有するムードに影響されていたんです。25歳くらいのとき、同性愛者だといわれるフリーランスの男性のところに打ち合わせに行きました。同僚に「カマ掘られんなよ」なんて言われたので、事務所で二人きりで対峙したときビクビクしていたんです。でも、話すうちに理解しました。「恋愛対象が男であるからといって、彼にも好みがあるだろう。恋愛対象が異性である場合と同じだ。好みの異性と二人きりになってもすぐさま襲いかからないように、仮に自分が彼の好みであっても同じだろう」ってね。男であれば誰彼かまわず襲いかかるなんて、ひどい偏見です。
その日を境に私の差別意識がゼロになった訳ではありませんが、以後30年くらいかけて、LGBTQの人々の運動や、いろんなニュース、いろんな本に触れ、徐々に意識をアップデートしてきました。
私だけではありません。2021年の朝日新聞の世論調査では、同性婚を法律で認めるべきだと考えている人は65%(認めるべきではない22%)だそうです。2015年では41%(反対37%)だったらしいので、世間はどんどん寛容になっています。とんねるずが保毛尾田保毛男を28年ぶりに復活させてバッシングされたのが2017年。四半世紀で視聴者も社会も変わっています。
そんな風潮の変化にもかかわらず、荒井氏や日本人の一部は、半世紀前の認識をまったく改めなかったのでしょう。自民党を支持する神社本庁や統一教会は同性婚や選択的夫婦別姓を認めないので、自民党が与党でいるあいだは差別解消のブレーキ役になるかもしれません。差別をなくすべきだと考える人は、どんどん世に意見を表明し、期待できる政党に投票しましょう。
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スウェーデンの小学校の教科書には、「同性愛者のお父さんに育てられている子供もいます」なんて記述もあるそうですよ。
いろんな人が触れているので少々憚られますが、2013年、ニュージーランドのモーリス・ウィリアムソンによる演説をリンクします。ユーモアがあり、反対派にも気を配ったいいスピーチです。