狩猟採集民のように走ろう!

狩猟採集民について学びながら、現代社会や人間について考えるブログ

狩猟採集社会と現代社会、平等と不平等

間永次郎『ガンディーの真実』1/2

ガンディーの真実 ――非暴力思想とは何か (ちくま新書) 作者:間永次郎 筑摩書房 Amazon あたくしは、反権力について考えています。ガンディーの非暴力不服従とはどんなものだったか、知りたくなりまして、ちょうど書店で『ガンディーの真実 非暴力思想とは何…

イリイチ『シャドウ・ワーク』

シャドウ・ワーク (岩波文庫 白232-1) 作者:イリイチ 岩波書店 Amazon 中学のとき日本史の先生がこう言いました。「古来、男は外で仕事をして稼いでくる。女はセックスでお返しをする」──そのときは言葉の成否を深く考えず、セックスという言葉を聞くだけで…

『奴隷のしつけ方』

奴隷のしつけ方 (ちくま文庫) 作者:マルクス・シドニウス・ファルクス,ジェリー・トナー 筑摩書房 Amazon 少し前に、マルクス・シドニウス・ファルクス著/ジェリー・トナー解説『奴隷のしつけ方』(橘明美・訳、ちくま文庫)を読みました。 私は、階級のな…

川田順造『「悲しき熱帯」の記憶』

「悲しき熱帯」の記憶―レヴィ=ストロースから50年 (中公文庫 か 29-2) 作者:川田 順造 中央公論新社 Amazon ちゃんとメモしておかないといけないなあ。読んだことを忘れてた! 川田順造『「悲しき熱帯」の記憶 レヴィ=ストロースから50年』を読んだのは、昨…

鶴見済『0円で生きる』

0円で生きる―小さくても豊かな経済の作り方― 作者:鶴見済 新潮社 Amazon なにかの本で紹介されていた鶴見済『0円で生きる』(新潮社)を読みました。サブタイトルは、「小さくても豊かな経済の作り方」です。 著者はなるべく金を使わない生活を実践している…

ケイレブ・エヴェレット『数の発明』

数の発明――私たちは数をつくり、数につくられた 作者:ケイレブ・エヴェレット みすず書房 Amazon 最近読んだ本から。 ケイレブ・エヴェレット『数の発明』(みすず書房)を読了しました。著者は、『ピダハン』を書いたダニエル・エヴェレットの息子で、父親…

『「利他」の生物学』

「利他」の生物学 適者生存を超える進化のドラマ (中公新書) 作者:鈴木正彦,末光隆志 中央公論新社 Amazon 10日前にも触れましたが、狩猟採集生活の本を読んでいると、「利他」というテーマにも突き当たります。 ★ ★ ★ いろんな動物で、血縁者のあいだでは、…

道路を歩行者に返せ(後編)

コンヴィヴィアリティのための道具 (ちくま学芸文庫) 作者:イヴァン イリイチ 筑摩書房 Amazon 自動車の社会的費用 (岩波新書 青版 B-47) 作者:宇沢 弘文 岩波書店 Amazon 社会的共通資本 (岩波新書) 作者:宇沢 弘文 岩波書店 Amazon 五輪と戦後: 上演として…

道路を歩行者に返せ(前編)

先日、マラソン愛好家に知られる方が次の記事を紹介していたのです。 記事がなくなるかもしれないので、引用。 福岡県那珂川市の市道をランニング中に、ぬれたこけが原因で滑ってけがをしたとして、県内の50代男性が市に1650万円の損害賠償を求めた訴訟の判…

E・M・トーマス『ハームレス・ピープル』

店名は内緒ですが、ある古本屋には人類学関係の本がたくさん置かれています。そこで、E・M・トーマス『ハームレス・ピープル──原始に生きるブッシュマン』(1977、海鳴社、原著は1959刊)を見つけたのでした。 エリザベス・マーシャル・トーマスの母ローナ…

矮小化される、国連人権理事会の会見

今年8月4日に行われた、国連の人権理事会作業部会の記者会見。10日ほど経ちましたが、どうやらこの会見が軽視されているというか、矮小化されているようです。ぜひとも全部見てほしくて、リンクしました。 かねてより、国連の人権理事会がジャニーズの性加…

堀切直人『喜劇の誕生』

大学時代に読んだ文芸評論家・堀切直人『喜劇の誕生』(沖積舎、1987)にやたら「ノマド」が出てきたけど、あれはどういう意味で使っていたんだっけ……とたまに思いだそうとしていたんです。こないだ本棚から見つけて読んでみたところ、ズバリ、 狩猟採集民 …

魯迅「賢人と馬鹿と奴隷」など

阿Q正伝・藤野先生 (講談社文芸文庫) 作者:魯迅 講談社 Amazon 5月半ばのこと、魯迅「賢人と馬鹿と奴隷」ってどんなんだったっけと、出かけたついでに図書館でコピーしてきました(文庫には入っていません。多分)。魯迅は1881年生まれの中国の文学者。儒…

夏目漱石『坊っちゃん』と資本主義

坊っちゃん (新潮文庫) 作者:漱石, 夏目 新潮社 Amazon 簡単に書けば、資本主義とは、誰かが誰かを搾取して儲けることです。資本家が儲けるのは、がんばる労働者からピンハネするから。 政府は資本主義が好き放題搾取するのを許しちゃいけません。誰かが儲け…

ケストナー『飛ぶ教室』

飛ぶ教室 (新潮文庫) 作者:エーリヒ ケストナー 新潮社 Amazon 何十年かぶりに、ケストナー『飛ぶ教室』(原題 Das fliegende Klassenzimmer)を読了。池内紀訳の新潮文庫版でした。ええ話じゃったわい。おじさん、心が温まりました。 舞台は、ヨハン・ジギ…

『女性差別はどう作られてきたか』

女性差別はどう作られてきたか (集英社新書) 作者:中村 敏子 集英社 Amazon ジェンダー研究の歴史について何か読もうと、書店で見つけた本です。著者は政治学者、北海学園名誉教授だそうです。福澤諭吉、ホッブズに関する著書、キャロル・ペイトマンの訳書が…

エリック・ウィリアムズ『資本主義と奴隷制』

資本主義と奴隷制 (ちくま学芸文庫) 作者:エリック・ウイリアムズ 筑摩書房 Amazon エリック・ウィリアムズ『資本主義と奴隷制』(1961)は英国の植民地政策を詳細に調べ上げた労作でした……が、専門的すぎておすすめしません。三角貿易とかね、アフリカ系の…

ジェームズ・C・スコット『反穀物の人類史』

反穀物の人類史――国家誕生のディープヒストリー 作者:ジェームズ・C・スコット みすず書房 Amazon ジェームズ・C・スコット『反穀物の人類史』(みすず書房)について。 私は読んでいませんが、C・スコットには『ゾミア』という大著があります。国家にした…

フロム『自由からの逃走』

自由からの逃走 新版 作者:エーリッヒ・フロム 東京創元社 Amazon エーリッヒ・フロム『自由からの逃走』(東京創元社)を読みました。フロムは社会心理学者で、本書は1941年に書かれています。市井の人々がナチスを支持してしまった心理を明らかにしようと…

菅原和孝『もし、みんながブッシュマンだったら』

もし、みんながブッシュマンだったら 作者:菅原 和孝 福音館書店 Amazon クア・ブッシュマン(自分たちを「クア=われわれ」と呼ぶブッシュマン)の回想。 「とうさん! ぼくはノア(ダイカー)の仔を打ち殺したよ」 とうさんはおれのほうをちらっと見て、そ…

『Humankind 希望の歴史』

Humankind 希望の歴史 上 人類が善き未来をつくるための18章 作者:ルトガー・ブレグマン 文藝春秋 Amazon Humankind 希望の歴史 下 人類が善き未来をつくるための18章 作者:ルトガー・ブレグマン 文藝春秋 Amazon スティーブン・ピンカーは統計を操作し「人…

J・S・ミル『自由論』

自由論 (光文社古典新訳文庫) 作者:ジョン・スチュアート ミル 光文社 Amazon J・S・ミル『自由論』(1859)を再読する気になったのは、この本に照らして日本がどのくらい酷いかを確認するためでした。今回は光文社古典新訳文庫を読みました。 内容をひと…

栗原康『はたらかないで、たらふく食べたい』

はたらかないで、たらふく食べたい 増補版 ――「生の負債」からの解放宣言 (ちくま文庫) 作者:栗原康 筑摩書房 Amazon 1ヶ月ほど前、NHKラジオの高橋源一郎「飛ぶ教室」に栗原康がゲスト出演しました。栗原氏も(高橋氏もですが)私と同じタイプだとすぐにわ…

『その農地、私が買います』

その農地、私が買います 高橋さん家の次女の乱 作者:高橋久美子 ミシマ社 Amazon 高橋久美子『その農地、私が買います』(ミシマ社)を通読。著者がなにかのラジオに出演されていたので知っていました。父親が売って太陽光パネルに覆われることになった愛媛…

『緑の哲学』

緑の哲学 農業革命論: 自然農法 一反百姓のすすめ 作者:福岡正信 春秋社 Amazon 服部文祥『お金に頼らず生きたい君へ』に、福岡正信『緑の哲学』が出てきたので、積ン読本からを見つけて読みました。 冒頭から面白い。 脱学校や脱道路を唱えたイリイチ(イリ…

服部文祥『お金に頼らず行きたい君へ』

お金に頼らず 生きたい君へ: 廃村「自力」生活記 (14歳の世渡り術) 作者:服部 文祥 河出書房新社 Amazon 1ヶ月ほど前に、服部文祥『お金に頼らず生きたい君へ』(河出書房新社)を読みました。 限界集落の廃屋と3000坪の土地を20万円で購入し(固定資産税は…

人材ぎらい……『学びの本質を解きほぐす』2

学びの本質を解きほぐす 作者:池田 賢市 新泉社 Amazon 「人材」「人的資本」「生産性」なんて単語を苦々しく見ていましたが、先史社会のことを考えるうち嫌悪感が増しました。現代人は人格全てが資本主義に取りこまれているみたいです。人間は材料でも資本…

『学びの本質を解きほぐす』1

学びの本質を解きほぐす 作者:池田 賢市 新泉社 Amazon 私はただいま57歳。微分積分とか三角関数とか、仕事上不必要なこともあり、私はいまだに理解していません。数学は崇高な学問と認識していますが、高校の数学を「ちゃんとやっておけばよかった」と後悔…

将基面貴巳『反「暴君」の思想史』と神宮外苑

反「暴君」の思想史 (平凡社新書) 作者:将基面 貴巳 平凡社 Amazon 先日書いた将基面貴巳『従順さのどこがいけないのか』(ちくまプリマー新書、2022刊)は、『反「暴君」の思想史』(平凡社新書、2002)を若い人向けに書いた本だとあったので、しばらく前に…

憲法第24条解釈のミスリード

今月10日の自民・世耕弘成議員の発言(→NHK)です。 (略)憲法24条の「婚姻は両性の合意のみに基づいて成立する」という規定と同性婚の関係をめぐっては「今の憲法を読むかぎり、同性婚は認めていないのではないか」 世耕氏のみならず、自民党議員ならびに…