狩猟採集民のように走ろう!

狩猟採集民について学びながら、現代社会や人間について考えるブログ

『オスとは何で、メスとは何か?』

諸橋憲一郎『オスとは何で、メスとは何か?』(NHK出版新書)を読了しました。副題は「『性スペクトラム』という最前線」です。

一般的な二元論〈男/女〉を相対化した一冊でした(相対化は、二項対立を乗り越えて新たな概念を作り出すことです)。

動物の世界では、メスに擬態したオスがいたり、性転換するケースがあるそうです。人間も、生まれたてのころは性器を見ないと性別はわかりませんし、女性的な男性、男性的な女性がいます。

《そうであるならば、男性(オス)と女性(メス)を対極に位置づけたうえで行われてきたこれまでの性の研究は、極端な例を取り上げて議論していたことになり、性の本来の姿を理解するにあたっては適切であったとは言えないのかもしれません。》《つまり、研究者がありもしない男女の対立軸、言わば「虚構の対立軸」を信じて研究を行ってきたのかもしれないのです。》

以下、遺伝とホルモンにより性の決定する仕組みが書かれていますが、著者の主張は、100%男と100%女の間にグラデーション(性スペクトラム)があり、たとえば90%男、80%女という人も存在するということです。はっきりと言及されていませんが、LGBTQに対する理解を深めようとする意図もあるのでしょう。