狩猟採集民のように走ろう!

狩猟採集民について学びながら、現代社会や人間について考えるブログ

カイキ月ショク

私は月マニアでして、怪しげなものをふくめ月に関する本をたくさん読んできました。ここで月の蘊蓄を語るのはよしましょう。ご興味のある方は、以前も紹介した松岡正剛『ルナティックス』をお読みください。ブックガイドとしても使える一冊です。

今夜は皆既月蝕でした。国立天文台のサイトで検索したところ、私の57年近い人生で皆既月蝕は52回目、日本で見えるものに限定して39回目だったらしい。初めて皆既月蝕を見たのは1972年1月30日か1979年9月6日でしょう。その間も皆既月蝕はありますが、深夜か未明なので寝ていたはずです。79年のほうは、広島は曇っていたかもしれません。

今回は天王星蝕も同時に起きるということで話題になっていましたが、天王星を望遠鏡などできちんと確認した人は少ないんじゃないでしょうか。

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ところで、漢字の話です。「蝕」という文字が常用漢字に含まれないため、「月食」「日食」と表記するのでしょう。月食とはいいとして、日食は日本食堂を思い出しますよね。私だけかな。

去年5月もカイキ月蝕があったんです。東京は曇っていて見られず。ジョギングしながら雲の向こうの月を想像しつつふと考えました。「ええっと、カイキ月蝕のカイキってどう書くんだっけ。カイはみんな欠けるってことだから『皆』だが、キがわからない。気、機、基、忌、記、器、奇……違うな、欠けるという意味のキがない。キキキキキ……映画『サイコ』みたいになってきた」

しかたなく、帰宅してから調べました。「皆既」か、そうだった……が、なぜ「すでに」? 白川静の本に拠れば、「既」の訓読みは、すでに・おわる・つきるだそうです。字解を一部引用します。

食事をして満腹になり、食器(皀)を前にして、後ろを向いておくび(げっぷ)をする人の形で、食事が終わることをいう意味から、「おわる、すでに」の意味となる。

なるほど、皆既は、みんな尽きたという意味なんですね。

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私もちらちら月蝕を眺めはしました。

時間帯も天気も観察に適していたため、多くの人がスマホで、あるいはデジカメで月蝕の写真をSNSにアップしています。いつだか、ブルーインパルスの写真がSNSがワッと埋め尽くしたときを思い出しちゃいました。天体ショーを楽しむことは悪いことではないし、みんな気持ちがホワホワとして幸せそうですが、人々が一斉に同じほうを向くのが怖い。これも私だけかな。