狩猟採集民のように走ろう!

狩猟採集民について学びながら、現代社会や人間について考えるブログ

新元号

天皇が元気なままの生前退位だからといって、みな浮かれてませんか?

4月1日、午前11時にはラジオを消しました。11時半くらいから菅官房長官による新元号の発表があるからです。みながみな、テレビラジオの前に座るなんて、玉音放送でもあるまいに。

私はいいこと思いつきました。

 

何時まで元号を知らないでいられるか、ゲームをしよう

 

スマホの、Facebook や Twitter からの通知をオフにしました。

速達を出す用があり、ちょうど11時半くらいに家を出て、郵便局を往復。帰路、通りがかりのクリーニング店から、店の夫婦とお客さんの会話が聞こえてきます。「レ〜ワ?」「うん、レ〜ワ」「なんかやだな」

な、な、な、なにっ?

いやいや、これは高校野球の話題かもしれんよ。「那覇高校と黎羽商業は延長戦のすえ黎羽が制しました」

……絶対ちがう、元号に決まってるよ!

表記は「礼和」かな。自分の好みは旧字で「禮和」だけどな。礼のつく元号あったっけ。「麗和」もあるかな。

でも、漢字を見るまでは知らないことにしておこう。

と、スマホに LINE の通知が。出かけている妻からです。

「令和だって」

ガーン。LINEの通知も切るべきだった。時計を見ると11時55分。元号の発表は11時41分だったそうだから、私に伝わるまで実質14分……恐るべし情報社会

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「万葉集」の「初春令月気淑風和」を分解したと報じられて「へっ?」と驚きました。令月と風和が対になってない。変な組み合わせです。

言葉は多様な解釈を生むもの。たった2文字の造語ですから感想がたくさん出るのはしかたない。

安倍首相は《厳しい寒さの後に春の訪れを告げ、見事に咲き誇る梅の花のように、一人一人の日本人が明日への希望とともにそれぞれの花を大きく咲かせることができる、そうした日本でありたいとの願いを込め》た、とおっしゃいます。

──しかし、それはない。

「令和」を見て希望の花があちこちに咲いている様子が浮かぶのは超能力者くらいのものでしょう。ところで、願いを込めた、の主語は誰?

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 「令」は命令の令。訓読みは「しむ、せしむ」です。私は「令和」と見たとき「和せしむ」(仲良くせよ)と誰かに命じられている気がしました。

私と同じ解釈でべつの感想を持つ方もあります。ロバート・キャンベルさんは《ぱっと見で「和せしむ」と読み世の中が平和になるよう仕向けること、平和に「させる」心で感心もした》とのこと。

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出典の「令月」は「よい月」という意味です。「令」に「よい」という意味ができたのは、神の命令にしたがうことを「よい、りっぱ」と言い始めたからだ、と白川静先生は書いています。竹田JOC会長のご令息は、《令の意味を「命令」しか連想できないのは、ただの無知。令嬢とか令兄とか令息とか、一つも頭に浮かばなかったということ》とツイートしました。「令和」が「よい和」か?

朝日のデジタルニュース「日本が困難な時、万葉集がはやる」 での磯田道史さんの発言《令を上につけた年号は、過去に「令徳」、徳川に命令するという案があったが、退けられた》とあるのも興味深い。こちらは「命令」ですね。

百田尚樹先生は《万葉集はすべて大和言葉で書かれています。ですから、私は万葉集から取ればいいとは思っていました》とツイートしたとか。万葉集はすべてやまとことばではありません。現に「初春令月気淑風和」は漢文だしね。百田先生は漢文否定派だったはず。落ち着いて!

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 国書をもとにした初の元号です、なんて胸を張るのが「保守」を自称する不思議。保守派とは「日本スゴイ」の人たちではなく、文字通り、伝統を重んじる立場の人たち。したがって旧来通り、「四書五経などを出典とせよ」と言うべきなのです。

令和のもととなった万葉集の該当部分、文選三巻の「歸田賦」(張衡)を下敷きにしたものだと、岩波文庫編集部がツイートしました。「令和」を提案した人は万葉集の権威ですが、時間もあったことだし、当然知っていたはずです。

日本文化は中国の影響抜きには考えられないと再認識した日でした

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外務省が「もう辛抱たまらん。西暦一本で行く」と言ったら官邸から横槍が入ったという記事も読みました。昭和が終わってから、元号はややこしいだけです。あってもいいけど、カレンダーの隅に書いてあればそれですむ。しかしお役所関連は元号を使わなきゃいけない。なんでだろう、私の免許証には「平成35年何月何日まで有効」とある。

問題です。「平成25年引く昭和53年は何年?」

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以下は、本日、走りながらぼんやり考えたこと。

日本人はいろんな暦を生きています。西暦と元号だけではありません。年度もある。旧暦で行事をすることもある。冠婚葬祭では六曜を気にする。皇紀を使う人もあるのでしょう。以前は干支で数える大人もいました。「あなた、干支は?」「ヘビです」「じゃあ、うちの息子とふたつ違いね」ってね。人生がだいたい60年なら、十干十二支は身辺のあれこれを測るのに便利だったのかもしれません。

──ここからは邪推です。

為政者は時間をつかさどりたがるもの。

元号のクーデター大化の改新に始まります。一世一元の制を発案したのはクーデターにより誕生した明治政府。つまり、いまの元号は薩長政権の考案した、いわば薩長暦なのです。長州の末裔・安倍晋三総理が政治のトップに君臨し、時間を管理しています。このたび(私は見てませんが)安倍首相がテレビをハシゴして元号をアピールしたり、役所がかたくなに元号に拘泥するのはそのためなのかもね。
もう一度書きましょう。願いを込めた、の主語は誰?

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この騒ぎよう、すでに御代が替わったようです。今年はこれから退位と新天皇の即位、それにともなう改元、即位の礼、大嘗祭と、今年いっぱい皇室行事が続きます。合間にラグビーワールドカップがあり、選挙がある。増税も予定されている。……一年中、お祭り騒ぎなのか?