Netflix『新聞記者』感想

放送大学のテストを提出したら見ようと思っていたドラマ版『新聞記者』全6話。ふだんはドラマを観ない私ですが、ついにNetflixの会員になっちゃった。ほかにもいくつか気になる作品があるので、まとめて見てから解約します。

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『新聞記者』(Netflix 2022/1/13配信)
 監督:藤井道人 脚本:山田能龍、小寺和久、藤井道人
キャスト:米倉涼子、綾野剛、横浜流星、吉岡秀隆、寺島しのぶ、ユースケ・サンタマリア、佐野史郎、利重剛、田中哲司、萩原聖人、柄本時生、小野花梨ほか

主人公は、東都新聞社会部の記者(政治部ではない)でありながら、官房長官の定例記者会見で手厳しい質問を繰り返す松田杏奈(米倉)です。他紙がスクープした国有地払い下げ疑惑を彼女も調べることになります。

首相夫人がかかわる愛知県の学校法人に、格安で国有地を払い下げられました。友人に便宜を図ったのではないかと国会で野党から追及された首相は感情的になり「自分や妻がかかわっていたら、そりゃもう、総理大臣どころか国会議員も辞める」と啖呵を切ります。事実、首相夫人がかかわっていたんですから総理補佐官(佐野)は慌てて、財務局長(利重)に決算文書の書き換えを命じました。文書に残っている首相夫人の名前を消すのです。決裁文書改竄という、民主主義国家にあってはならない重大犯罪が始まりました。作業をさせられた中部財務局・鈴木(吉岡)は「国民のために働く」を信条とする真面目な公務員です。鈴木は自分の犯したことに耐えられず、自死を選びます。

──さらに、最初、新聞を読むことのなかった大学生・木下亮(横浜)や、総理夫人付きでのちに内閣調査室に異動する官僚・村上(綾野)、鈴木の妻(吉岡)らが徐々に接点をもちはじめ……。

おわかりのとおり、森友事件をベースにしたフィクションです。官房長官に質問する姿は東京新聞・望月衣塑子記者をモデルにしていますが、彼女がドラマのようにスクープを連発した事実はありません。ジャーナリスト相澤冬樹記者と「週刊文春」の成果も盛り込んでいますね。

綾野剛がだんだんしおれていくさまや、内閣官房参与・豊田演じるユースケ・サンタマリアの悪役ぶりが素晴らしい。大学生の女友達・小野花梨という女優も良かった。たったひとことしか台詞がなかった鈴木の同僚は二ノ宮隆太郎という俳優らしい。いい面構えです。

生き馬の目を抜くTOYOTA、犠牲になるSUZUKI、不正を暴こうとするMAZDA。

私は威張っている人やギチギチの上下関係が嫌いですから、官僚の世界は見ているだけで恐ろしくなります。犯罪行為とわかっていながら上からの命令には背けないだなんて組織は地獄でしかありませんから、一種のホラーでした。内調の不気味さは映画版『新聞記者』のほうがすさまじかったけど。

仮にこのドラマを地上波で企画しても、スポンサーがつかないでしょう。Netflixはテレビのようにスポンサーや表現の制約がないので、自由なんですね。映画版では日本の女優が主演を引き受けなかったと聞いたことがありますが、米倉涼子は個人事務所らしい。おそらく出演料も制作費も日本のドラマより多いはずです。おそるべしアメリカ資本。

ただ、日本人は「ここまで政治批判できるのはすごい」と感じますが、海外の人なら「中途半端だな」と言うかもしれません。

私は回を追うごとに「やはりドラマは現実と違う」という思いが強くなりました。全体にまあまあ面白く見たものの、「日本に似たどこかの国の話だな」という感想も抱かざるを得なかったのです。今の日本に権力に歯向かう正義が存在するのか、と感じているので……。

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溜息つきながら現実の日本について書きましょう。

いわゆるモリカケサクラ問題、日本学術会議の任命拒否問題、憲法を無視した法案の強行採決、軟弱地盤に土砂を投入し続ける辺野古基地の問題、基幹統計の不正、与党政治家の問題発言……東北大震災以降、日本の凋落ぶりには目を覆いたくなります。

「政治って全部うえで決まっている感じがする」という亮の台詞は、若者一般の認識を表しているのかもしれませんが、彼のように考えを改める人がどのくらいいるでしょうか。

個性を磨けだの多様性の時代だの、みな口では言いますけど、学校、部活、会社などの組織でひとりひとり牙を抜かれ爪を剥がされ、1500ccもある巨大な脳を使わない歯車ロボットに作り替えられている気がします。歯車だらけの国で正義を探すのは難しい……と、愚痴。