狩猟採集民のように走ろう!

狩猟採集民について学びながら、現代社会や人間について考えるブログ

やればパリピか、日本人?

しばらく、東京オリンピックについて浮かぶ考えを記録していきます。

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東京オリンピックが批判にさらされています。前年、ある新聞が掲載した「オリンピック 盛り上がらぬ世論 “責任体制”どうつくる」という記事には、

  • 国民が、関係者まかせで無関心である
  • 組織委員会が無責任である
  • 関係者が、オリンピックに便乗して補助金や公共事業を乱発している
  • 関係者が、主役である選手を無視して独善的なプランを立てている

など、批判が書かれていました。事実、寄せ集めの組織委員会には内紛が起き、トップが不在になることもありました。その無責任な体質は海外からも批判されています。

大会の1年半前、NHKが都民に対しておこなったアンケートで、「オリンピックは結構だが、わたしには別に関係ない」と回答した人は47.1%、大会直前に同じ質問をすると56.8%まで上昇したそうです。

──以上、1964年東京オリンピックの話だそうです。生まれる前ですから私が覚えているのではありません。辻田真佐憲『超空気支配社会』(文春新書)第一章に書いてありました。2021年のオリンピック開始前と似た状況とは思いませんか。

ところが現在、1964東京大会は高度経済成長期の輝かしいシンボルとして語られています。

日本人が初めてオリンピックの生中継を見たのが、ほかならぬ1964年大会でした。当初関心のなかった人たちも、日々ブラウン管に映る日本人選手や、ボブ・ヘイズ、アベベ・ビキラ、へーシンクの活躍に胸を躍らせ、結局おおいに盛り上がり、その記憶だけが残っているのです。大会後にいわゆる証券不況が来たことも忘れています。

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さて。2021年の大会まで約1ヶ月だそうです。あまり見ないテレビをちらりと覗いたら、ラジオやネットメディアとはまったく違い、オリンピック直前モードなので驚きました。

私は、東北復興のリソースを奪うこと、猛暑での大会が危険であること、などを理由に2020東京大会に反対してきました。さらに新型コロナウイルスの流行が加わりました。東京は6月18日から実効再生産数が1を上回り、全国規模で見てもぐんぐん1に迫りつつあります。第5波の到来です。デルタ株(いわゆるインド株)のせいで今回は感染者の増加が早いかもしれません。

GoToキャンペーンの失敗を見ても、移動と感染に連関があるのは明らかです。海外から何万人もの選手、スタッフ、メディア関係者……を入れて、感染リスクが増えないと断言できる人はいるのでしょうか? 安全安心の連呼はお題目にもなりません。

では、オリンピックが開かれた場合、人々は盛り上がらないのでしょうか。

共同通信社による今年1月9、10日の世論調査では、2021大会を「中止すべきだ」35.3%、「再延期すべきだ」44.8%。合わせて80.1%がネガティブな意見でした。ところが、6月19、20日の調査では、「中止するべきだ」30.8%、「無観客で開催するべきだ」40.3%となっています。

中止または延期派が、今年やるのは決まりでしょ。だったらせめて無観客にして、と譲歩しているんです。「どうせやるなら、やさしくして」ってわけですね。

以前書いたとおり、丸山眞男は、日本人の歴史意識の古層を「つぎつぎになりゆくいきほひ」と書いています。オリンピックが始まったものはしかたないから応援しようと考えるのではないでしょうか。「私の個人的意見は(戦争に)反対でありましたが、すべて物事にはなり行きがあります」(東郷茂徳)なわけです。

そんな国民性に乗じて、政府は次のようなシナリオを描いている気がします。

オリンピックの強行
→ 他国の選手の準備不足や、参加しない国や地域があるため、日本のメダルラッシュ
→ 日本人メダリストがニュースやワイドショーに連日出演
→ 国民みんなパリピ状態
→ 内閣支持率急上昇
→ オリンピック・パラリンピック終了後、2度目の10万円給付
→ 国民ウエイウエイ、支持率ますますアップ
→ 秋の衆議院選、自公勝利
→ 菅義偉首相、自民総裁に選ばれ続投

大いにありうると思われます。感染状況がひどければ、パラリンピックだけを中止して英断したと見せるのがプランBだと予想します。持続化給付金に関しては、前年度から繰り越した新型コロナ対策費30兆円があるので、問題ありません。

オリンピック期間中に緊急事態宣言がまた発令されるほどの感染者数・重症者数になると思います。大会関係者の陽性者も出てくるでしょう。国民が感染対策とオリンピックの感動を峻別して冷静に評価できるかどうかがポイントになりそうです。 

──オリンピックまであと26日。