狩猟採集民のように走ろう!

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なぜ2年延期にしなかったのか?

ウソから出るマコト

2017年2月17日の衆議院予算委員会。森友学園に売却された国有地が大幅に値引きされていた問題を民進党・福島伸享議員[当時]に追及された安倍晋三総理大臣[当時]は得意のキレ芸を見せました。「(国有地払い下げに)私や妻が関係していれば、首相も国会議員も辞める」と啖呵を切ったのです。直後、誰かが指示して財務省の決裁文書の改竄がひそかに行われます。「安倍昭恵」や政治家の名前、「本件の特殊性」などといった文言が文書から削除されていったのです(籠池夫妻と昭恵さんが映った写真を財務省に見せた日の応接記録はいまだに公開されていません)。

2019年5月、桜を見る会の支出が予算額を大幅に越え、参加者がふくらんでいることを共産党・宮本徹議員が疑問視します。5月9日正午に招待者名簿を要求すると、内閣府はその2、3時間後に名簿をシュレッダーにかけてしまいました。バックアップデータの復元にも応じません。各界で功労・功績があった人を慰労するという会本来の趣旨に反し、安倍氏の後援会や昭恵さんの友人、反社会的勢力、ジャパンライフの会長などが招待されていることが判明するのはもう少しあとの話。

安倍氏は小学生のころ、やってもない宿題をやったとウソをついて寝てしまい、母親やお手伝いの久保ウメさんがかわるがわるノートを埋めたというエピソードがあります。周囲が安倍氏の気持ちを忖度して事実を歪曲してくれるのです。ウソから出るマコト。ジョージ・オーウェルの世界です。

なぜ2年延期ではなかったのか

2020年3月24日、安倍晋三首相[当時]と国際オリンピック委員会(IOC)のバッハ会長が電話協議をし、東京オリンピック・パラリンピック2020を1年延期すると合意しました。安倍氏は「アスリートの皆さんが最高のコンディションでプレーでき、観客の皆さんにとって安全で安心な大会にするため」と提案、バッハ会長は「100%同意する」と応じたそうです。「安全安心」ってすでにこのときから使われていたんですね。

そのころ日本はコロナ第1波のまっただなか。

マスクが市場から消えたり、紙製品が品薄になったり。twitterなどでは、「たくさんPCR検査をすると偽陽性者が出て医療崩壊する」というナゾ論理で検査抑制を主張する人たちがガーガー言っていました。のちに厚労省も同じ理屈で検査を抑制していたことが判明しますが(→東京新聞 2020/10/11)、他にそんなこと言った国ありますか? 安倍氏が「国民全員に布マスクを配る」と言ったのは4月1日です。エイプリルフールの冗談かと思いました。

ところで──。

専門家らは口をそろえて「ワクチンができるまで数年かかるだろう」と言っていました。それならば2年延期のほうが少しは現実的だろうに、なぜ1年先延ばしになったのか? 森喜朗組織委会長[当時]がいろんなインタビューで発言しています。リンクの記事(→日刊スポーツ 2020/4/29)から引用します。

森会長 感染症がどうなるか分からない。2年の方が安全だと誰もが考える。だから一応、提示したが首相は「1年にしましょう」と言い、決まった。でも、現実的には選手のこと、大会運営上の問題を考えても2年延期はありえなかった。22年は北京冬季五輪があるし、その2年後にはパリ五輪がある。2年後なら中止になる。

ふむ。べつに冬季オリンピックと順番が変わってもいいじゃないの?

当時、各メディアは、安倍氏が1年延期としたのは選挙対策だろうと書いていました。2021年9月末に自民党総裁の任期が切れる安倍氏は五輪を花道にするのではないかとか、国会が閉幕する6月下旬に解散して自民を勝たせ、総裁続投論に火をつけるのではないかとか……。たいていの政治家は、次の選挙で当選することしか考えていませんから、東京大会1年延期が選挙と関係していても驚きません。

しかし忖度してくれない新型コロナウイルスに手を焼いた安倍氏はオリンピックを待たずして病気再発で退陣(最近はお元気そうです)、菅義偉政権に代わりました。

仮に、2年延期だったらどうだったでしょう。変異株次第なので誰にも正解はわかりませんが、ワクチン供給は世界に拡がり、今より感染が抑えられている可能性はあります。国際大会の知見を積み上げて、参加選手の検査方式などにも良いアイデアが出てくるかもしれません。ぼったくり男爵も落ち着いてぼったくれるのではありますまいか。

今も安倍氏に振り回されている

日本では今まさに第5波が始まったところ。東京オリンピック・パラリンピック号は大きな波を乗り切ることができるのでしょうか。

船頭は多いんです。誰がえらいのかわからないので順不同で書きますが、菅首相、分科会、小池百合子東京都知事、橋本聖子組織委会長、丸川珠代オリンピック・パラリンピック担当大臣、山下泰裕JOC会長、萩生田光一文科大臣(室伏広治スポーツ庁長官は関係ないの?)。彼らは科学を無視して「えいや!」とばかりに大会を強行しようとしています。

大会と大いに関係する新型コロナ対策では、菅首相、田村憲久厚労大臣、西村康稔新型コロナウイルス感染症対策担当大臣、河野太郎新型コロナワクチン接種担当大臣、岸信夫防衛大臣(こちらも船頭多し)らが右往左往しています。

観客を入れるとか入れないとか、空港検疫をどうするかといった混乱も、「1年延期」と決めた人が引き起こしたと言えます。安倍氏の尻拭いを母親やお手伝いさんがやるならともかく、多くの大臣や専門家がインチキ論法を使ってむりやり開き、国民を巻き込もうとするだなんて。

27日のニュースによると、政府はデルタ株(インド変異株)が流行する国・地域から来日する選手に対して毎日検査する(PCRなのか抗体検査なのかハッキリしませんが)のだとか。あれれ、不思議ですよね、「たくさん検査したら医療崩壊するだろ!」論の人たちがオリンピック選手の検査についてはなんにも言わない。

毎日が喜劇のようですが、現実なんですよね。

──オリンピックまであと25日。

 

以下、参考文献

↑ 久保ウメさんを取材。

安倍三代 (朝日文庫)

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 ↑ 安倍晋三や父・安倍晋太郎よりも、晋三の岸信介ではないほうの祖父・安倍寛(かん)という人物が魅力的です。寛は「富の偏在は国家の危機を招く」と主張して国会議員になり、戦時中も反戦の姿勢を崩さなかったために特高につけ狙われたらしい。孫・晋三が「富の偏在」を拡大し、共謀罪を成立させたのを見たらなんと嘆くでしょうか。

嘘つきシンちゃんの脳みそ

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  ↑ すぐ読める絵本です。絵は矢吹申彦さん。数か所誤植があります。