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狩猟採集民について学びながら、現代社会や人間について考えるブログ

民衆蜂起……安丸良夫2

日本の近代化と民衆思想 (平凡社ライブラリー)

日本の近代化と民衆思想 (平凡社ライブラリー)

 

原始的な狩猟採集社会は平等分配社会といわれ、階級はないと言われます。人間社会にとって現代の階級社会は普遍的ではないのかもしれません。そう考えると、人間の反権力的な行動に興味が湧いてきました。

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歴史学者・安丸良夫(1934-2016)『日本の近代化と民衆思想』の後半は一揆などの民衆蜂起について書いてあります。

江戸では、悪政をはたらく権威者に対して農民が一揆を起こすようになり、それなりの効果をあげました。庄屋は打ちこわしをおそれて、押しかけた農民たちに酒や食事をもてなしたり、役人が年貢を緩めてくれることもあります。ただ、小生産者農民たちは反社会的な宗教も思想も持たないので、宗教国家、民主主義国家、共産主義国家などを構想していたわけではありません。幕藩体制の枠組みのなかで「仁政」を行ってくれと要求しているのです。「封建社会という今の枠組みのなかできちんとやってくれ」ということですね。

いろいろ面白い話題がありましたが、割愛して幕末の話を。

為政者が「仁政」を行うことのみを要求してきた庶民は、外国船が来て幕藩体制の絶対性が揺らいだのを見て混乱します。

蛤御門の変をきっかけに幕府は二度の長州征伐を行いますが、乱世の到来と感じた人々は、尊皇攘夷派や長州藩に期待を抱きました。慶応三年、京阪地方に着いた長州藩兵をでむかえた民衆は、「長州征伐前後から予(かね)て長州は豪い者だ」と、兵士らと「ええじゃないか」を踊ったそうです。

では、彼らが支持した長州藩たちにより作られた明治新政府は、みなが望んだ「世直し」をしたのでしょうか。

《いうまでもなく、現実の維新政府は、年貢半減令をたちまち撤回し、世直し一揆を押えて豪農商層につく絶対主義権力であった》うえ、《攘夷のスローガンなどはいち早くすてて、民衆の伝統意識からは理解しがたい諸政策をつぎつぎと実施してゆく、えたいのしれない超越的権力であった》と安丸は書きます。不換紙幣の濫発、開港貿易にともなう物価騰貴、学制・徴兵制・太陽暦・地租改正……。

かくして、市中では洋服(外国人=異人の象徴)を着た官吏が襲われたり、封建復古・徳川家恢復・旧藩主ひきとめの一揆が頻発することになりました。しかし大正デモクラシーにいたっても最終的に国を変革するにはいたらず、庶民は忍性・我慢という通俗道徳に落ち着いていくのでした。

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坂の上の雲を追っかけて帝国主義に向かっていく明治新政府。司馬遼太郎や大河ドラマや教科書で日本のイケイケ時代をなつかしむみなさん、最下層の人々についても調べてみてくださいまし。