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南海トラフ巨大地震について 2/2

本日、メールでやりとりしたある人は、地震がこわいので九州に住む両親にレトルト食品や水を送ったと書いていました。災害時に備蓄は必要なので食料を送ったのはいいことです。ただ、南海トラフが明日来る可能性もあるにはあるけど、地震予知はいま現在の技術では不能だと専門家も言っているし、過度に緊張しないほうがいいですよと送りました。ほかの人からのメールにも、「お盆に帰郷するそうですが、南海トラフには気をつけてください」とありました。

すると、19時57分ごろ、神奈川県西部で地震が発生、震度5弱でした。東京都下のうちは震度3か4。ガタガタッときました。NHKのテレビを見ると、地震の情報を伝えながら、画面のわきに「巨大地震注意」と書かれています。

そりゃ、みんな怖がるよ。

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私は、国会中継を観るのが好きですが、普段は日本維新の会の質問は見ません。みずから「(与党でも野党でもない)ゆ党です」なんて言うんですから。

2024年3月8日におこなわれた参議院予算委員会での、維新・猪瀬直樹議員の質問はたまたま見て、引きつけられました。猪瀬氏は、南海トラフ地震の危険度が「盛られている」と質問していたのです。私は政治家としての猪瀬氏は評価しませんが、その質問は、優秀なノンフィクション作家だったころを髣髴とさせました。もっとも、自分で取材したのではなく、みずからそう言っていたように、菊池寛賞を受賞した東京新聞記者・小沢慧一『南海トラフ地震の真実』の内容を大臣にぶつけたのでした。

時間がある方はぜひ国会議事録をお読みください。そうでない方は、飛ばしてかまいません。

現在、南海トラフ巨大地震は、「30年間に70〜80%の確率で起こる」と言われています。そんなエリアに川内原発や伊方原発があるのは不思議な話です。

小沢氏は南海トラフだけ、「時間予測モデル」というはなはだ根拠の薄い手法を用いて地震の発生確率を割り出していることを指摘。それ以外は「単純平均モデル」で予測していて、南海トラフをそちらで算出すると、確率は20%に下がるんだそうです。

南海トラフのリスクを水増ししているため、ほかの地域の地震リスクは相対的に低く見えます。下の図を見ながら思い出してください。実際に地震が起きたのは、真っ赤っかの南海トラフではなく、新潟中越沖、岩手・宮城、東日本、熊本、北海道胆振、能登半島と、震度7クラスの地震がほかの地域で発生しました。(下図は、東京新聞2022/10/23から。能登半島の地震が起きるまえです)

熊本や能登は「うちの地域は地震が少ない」と言って企業を誘致していたそうです。

どうやら防災利権というのがあるらしい。科学者が20%にする・または20%とも考えられることを併記する、と主張したのをつぶしたのは防災関連の官僚なんだそうです。南海トラフの危険度水増しにより国土強靭化の予算は、1位が和歌山(自民の重鎮・二階俊博の地元)になっています。公共事業の配分が歪められている可能性があるのです。

一方で、地震保険の保険料率は国が決めていて、都道府県ごとに三段階に分けているといいます。地震危険率が高いとされる南海トラフのエリアは保険料が高いんですが、「この料率の計算の中に。僕、ちょっと聞いたところによると、むしろ単純平均モデルを使っているようだということも聞いているんですけど、どうなんですか」と猪瀬が質問。その答えがこちら。

鈴木俊一大臣「保険料率決定に当たりましては、時間予測モデルのデータは採用していないと承知をしております」
猪瀬「これ、今の金融庁のお答え、非常に重要なことをお答えになっているんですね。時間予測モデルは信用していないんですよ、お金にうるさい金融庁が」

おあとがよろしいようで……。

昨日も書いたように、日本全国、いつでもどこでも大地震が起きる可能性があるのです。NHKはテレビ画面のわきに「南海トラフ巨大地震注意」と書いていますが、南海トラフも、べつの地域も、地震はいつでもどこでも突然起きるんです。本日の地震だって南海トラフとは関係ないはずです。

総裁選に向けて支持率を上げるためか、あるいは緊急事態条項の必要性を訴えるためは、あるいは裏金問題などを隠すためか、「巨大地震注意」なんて強い言葉を放ったため、夏休みの西日本の旅行をとりやめたり、防災グッズの買い占めが起きているらしい。電車も一部区間でスピードダウンするんだとか。本日の岸田首相のぶら下がり会見は、お盆は注意して出かければいいみたいなことを言っていたようです。あんまり南海トラフ巨大地震を煽るからこうなっちゃう。みんな冷静になりましょう。

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以下が、今も読める東京新聞の連載です。

南海トラフ 80%の内幕:東京新聞 TOKYO Web

私は読んでない本はリンクしないんですが、この連載がもとになった書籍がこちら。