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神一行『閨閥 改訂新版』

政略結婚で姻戚関係をつくり、政財界を支配している特権家系がある──と書くと、藤原摂関家や中世の話のようですが、現代日本もそうなのです。

たとえば、いまの総理大臣の岸田文雄の祖父・正記と父・文武も政治家で、母親は元日東製粉社長の次女。宮沢喜一の弟・宮沢弘は文雄の叔父。弘の息子である宮沢洋一は従兄弟です。宮沢家は鳩山家やブリヂストンの石橋家ともつながっていますから、岸田家の遠縁といえます。岸田文雄の弟・武雄の妻は湖池屋の創業者の長女。2人の妹の夫は財務官僚と元国税庁長官です。

神一行『閨閥 改訂新版 特権階級の盛衰の系譜』(角川文庫)という本があることを知り、ダウンロードして電子書籍でざっと読みました。2002年の本ですから少々データが古いんですが、よく調べています。もともと「サンデー毎日」に連載されていたようです。

政財界のいろんな家系図が載っています。

丁稚奉公から一代で世界のナショナルを築いた松下幸之助は立志伝中の人物でしたが、成功してからは「閨閥形成」に努め、家門を高めようとしたんだそうです。一人娘の婿養子として旧華族を、孫の妻には日本生命の創始者・弘世現の孫を迎えています。

ことほどさように、特権閨閥は《日本の支配構造の中でアメーバーのごとく増殖している「支配家系」》を形作り、 権力と権益を与え合っているわけです。

あとがきで、《彼らの権力拡大意識の根底をマックス・ウェバー流の表現を借りて「家産主義国家」(略して家産主義)の角度から見てみ》た、と著者は書いています。

家産主義国家とは、国家全体を一部の特権的身分層が「公」の名の下に実質的に「私」する国家という意味である。厳密にいえば、その特権的身分層(これはアメリカの社会学者C・W・ミルズの〝パワー・エリート〟とみてよい)が、必ずしも国家を私有するわけではないが、その実質的権力を握り、それを実地運営することで、一般庶民とのあいだに画然たる差別体系をつくっているシステムのことである。 (あとがき)

 家産主義は、英語で「パトリモニアリズム」という。これは「財産世襲制」とも訳されるように、ある種の人々が国家の共有財産を連綿と受け継ぐという意味を含んでいる。つまり、一部の人々が国家の財産を専制的に運営し、その権利を順次〝特権階級〟に引き継ぐということである。こうした現象は、先に述べたように発展途上国に多く見られる例で、これらはいうまでもなく国家の私物化である。この意味で特権閨閥家系は、まさに家産主義思想の上に存在しているといえなくもないのである。(あとがき)

日本では、200年以上続く同族経営の会社が世界の45%あると、『日本の私立大学はなぜ生き残るのか』に書かれていました。世襲のなんと多いことでしょう。(余談ですが、ときおり血液型診断が流行するのも、日本人が「血」に拘泥するためじゃないかと感じます。O型とO型が結婚すると子どもはO型なんですよ。性質も遺伝するの?)

結果、頭がよく、高い志をもった候補者は世襲候補に敗れ、優れたベンチャー企業は大企業に叩かれるのです。オルテガも、世襲議員を「慢心しきったお坊ちゃん」と表現していました。統一教会や裏金工作していた世襲議員だらけのあの政党を下野させないと機会均等な世の中にはなりません。