狩猟採集民のように走ろう!

狩猟採集民について学びながら、現代社会や人間について考えるブログ

鶴見済『0円で生きる』

なにかの本で紹介されていた鶴見済『0円で生きる』(新潮社)を読みました。サブタイトルは、「小さくても豊かな経済の作り方」です。

著者はなるべく金を使わない生活を実践している人なんだろうか……ただの実践者にしては、経済や人類学の専門書などの引用も多くてよく勉強しているなと読み進めているうち、思い出しました。『完全自殺マニュアル』を書いた、東大卒のライターとのこと。本のどこにもプロフィールが書かれていないのです。

前著『脱資本主義宣言』の実践編がこの本らしい。シェア、贈与、相互扶助などの方法が具体的に書かれています。知らないことも多く、勉強になりました。 

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贈与のわずらわしさにも触れられていました。「出産祝いをもらったので半返ししなきゃ」みたいなつき合いはたしかに面倒くさい。

ただ、太古の昔より人間社会にギフトがあったと書くのは少し違うんじゃなかろうか。トロブリアンド諸島のクラや、インディアンのポトラッチは贈与として有名ですが、所有の概念が生まれた首長制社会で行われるものです。

私が読んでいる狩猟採集社会では贈与に対する返済義務はありません。なんでもみんなで分配し、「誰がより多くあげた」という計算をしないのです。そもそも、モノや数えたり量を量る道具(数字)がない。もらったほうは「ありがとう」とも言いません。

「出してない人から年賀状が届いちゃった」というだけで気持ちに負担が生じる現代より、私はそちらのほうがいいなあ。