ところで、『「みんな違ってみんないい」のか?』に、利他に関する記述がありました。メモのつもりで。
最後通牒ゲームなどいろんな実験で、《人間は、自分の利益をなげうってでも、利益を独占しようとする「不正な人間」を罰しようとする》ことがわかっています。
また、人間は《他人と助け合うことに大きな喜びを感じる感性》を持っています。
不正に怒りを感じたり、利他的な行動をとることは、進化倫理学の謎でした。
アメリカの進化生物学者リチャード・アレグザンダーは「間接互恵の理論」(1987)を唱えました。間接互恵(親切にされたら、親切でお返しする)をする動物もいますが、人間は、見返りがなくても他人に親切にする場合があります。
アレグザンダーの説明は──《要点を一言でいうと、直接的な見返りが期待できない相手に親切にすることで、社会の中での評判がよくなるので、結局のところその人の利益になるというのです》。
付言すると、見返りを求めない利他的行動が評判によって利益になるということは、そのような行動を取ろうと思う本人に自覚されていることではありません。むしろ、「よい評判を広めるために親切にしよう」と思っている人は、たいていの場合、そう思っていることが見抜かれてしまい、かえって評判を落とすものです。それゆえ、他人に親切にすることに無条件に喜びを感じるような感性こそが、進化してくるのです。人間には、人を見たらわけもなく親切にしたいと思う傾向があるということです。(116ページ)
以前、進化生物学者ロバート・トリヴァースが、利他的行動の進化に関して「互恵的利他主義」を唱えたのが1971年だと読みました。