狩猟採集民のように走ろう!

狩猟採集民について学びながら、現代社会や人間について考えるブログ

『「利他」の生物学』

10日前にも触れましたが、狩猟採集生活の本を読んでいると、「利他」というテーマにも突き当たります。

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いろんな動物で、血縁者のあいだでは、互いを利する行為が見られます。しかし、遺伝子を残すことが生き物の目的だとすると、近親者を守るのは利己的な行為だといえます(ドーキンスの「利己的な遺伝子」)。では、生物には、利他的行動はないのでしょうか。

生物間の共生には、二種類あるそうです。
互いにメリットがある共生=相利共生(利他的行動に近い)
片方だけにメリットがある共生=片利共生(利己的行動に近い)
どちらも、いろんな事例を挙げて解説されます。

卑近な例で言えば、花と、花粉を運ぶ虫の関係は、相利共生です。利他的だとはいえ、互いにメリットがあるわけですから、私が考える完全な利他(損得勘定抜きの行動)とは言えません。でも、人間は見ず知らずの他人にも親切にしますよね。

(略)人間では脳の著しい進化により、情報処理能力が格段に高まり、同時に複雑な感情を持つようになっています。その結果、動物には見られないような高度な利他的行動が古くから見られます。以前、ネアンデルタール人の化石から腕と脚が不自由で片目が失明している人のものが見つかりました。化石を調べてみると、その人物はどうやら不自由になってからも数年間生存していたと推測されたそうです。こは仲間から食料を分け与えられ、敵からも守られて生存していたことを意味します。このような化石の証拠から、人類がそのころすでに利他的行動を行っていたと推測されます。
 こうした人間の持つ発達した利他的本能は、人間が他の種に対して優位に立つ原動力、すなわち子孫をより多く増やすためのアドバンテージになったといえます。(略)

すなわち人間に見られる利他的な行動は《遺伝子にとっては増殖するための「利己的行動」とみることができます》と言われると、メタレベルではやはり利己的行動なのか──と苦笑せざるをえません。まあ、そのあたりが正解なのかなあ。

しかし、人類はせっかく進化の過程で利他性という "武器" を獲得したのですから、種の生存戦略としては、それを大事にするのが一番です。利己的な「競争」よりも、利他的な「共生」をいっそう大切にする社会の構築を模索したいものです。

まったくその通りです。戦争反対。