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BS特集 極北に生きる親子三代 イヌイットの日本人家族

バタバタ続きで、読んだり見たりしたことをなかなか記録できていません。『BS特集 極北に生きる親子三代 イヌイットの日本人家族』の話も、再放送前には書こうと思ったんですが、再々放送の前日になってしまいました。【NHK BS1 2022年12月26日(月)10:00~10:50/2023年1月24日(火)13:00~13:50】

グリーンランドのシオラパルクといえば、真っ先に大島育雄という名前が浮かびます。現地でイヌイットとして暮らす日本人であり、テレビドキュメンタリーや角幡唯介の著作によく出てくる有名人です。75歳で健在でした。番組には、彼の息子や孫が登場し、猟をしていましたが、彼らを「日本人家族」とひとまとめにしていいのかどうかはわかりません。

大きなカモシカを倒して、祖父・父・孫の三人がどうやって運ぶのだろうと見ていたら、その場で解体し、脚の腱を結んで額に引っかけて……うむむ。説明が難しい。番組を見てください。渡り鳥アッパリヤス猟もやっていました。

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昨年、『世界ウルルン滞在記』の未開社会が登場する回だけを集中的に見たんです。芸能人が世界のあちこちに行き、現地の人々と交流する番組で、1995年から2007年まで放映されました。司会は徳光和夫。スタジオには、VTRを見るタレントがいて、石坂浩二が時折りトンチンカンな蘊蓄を垂れたりします。時に、ヤラセっぽい演出もありましたが、アフリカのブッシュマン(すでに定住化させられていたものの狩猟は禁じられてなかった)、北欧のサーミ、タイのムラブリ、ミクロネシアの首長制社会、ミャンマーとタイの狩「漁」採集民サロン、メキシコのタラウマラなど、貴重な映像が見られました。

#199、#200「グリーンランド世界最北の村に藤重政孝が出会った」(1999.6.27、1999.7.4)はシオラパルクの話で、大島氏も登場します。実は、こちらの番組のほうがイヌイットの生活に関しては詳しかったのです。以下は、その番組視聴後のメモです。

前半は、二人の漁師と犬橇に乗り、シオラパルクに向かう旅の語でした。北極タラを釣り、タラをエサにして深海魚カルガリ(オヒョウ)を獲るなど、漁をしながらの7日間でした。イヌイットは野菜を採りませんが、アザラシの肝臓(生)を食べることでビタミンを補給しています。

後半は、世界最北の村シオラパルクでの生活です。北極点まで1300kmの地に、イヌイット55人が暮らしています。日本人・大島育雄も登場しますが、藤重氏は別の家にホームステイし、猟にも大島氏は同行しません。1940年頃、交易所ができました。醤油も売ってます。

デンマーク領グリーンランドのイヌイットは、4000年前、アメリカ大陸から凍った海を渡ってきたらしい。大昔、橇は流木でつくったそうです。アザラシは、白い布を張った小さな橇で風下から近づき、銃で仕留めます。100年前に鉄が入って来たが、800年前から金属を使っていたことがわかっていて、なんと隕石を加工した道具だったそうです。

渡り鳥アッパリヤスを発酵させたキビアは、映画『北の果ての小さな村で』でも見たような。藤重氏は解禁日にセイウチ猟に連れて行ってもらいます。モーターボートを犬ぞりで運び、流氷を縫って海へ出るのです。移動をのぞき2日間で15頭仕留め、共同で猟をした全員で平等分配。セイウチ一頭で家族が1ヶ月暮らせるとか。藤重氏が泊まった家では、分け前を親戚に配っていました。

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NHKの番組に戻ります。『ウルルン〜』から約35年後の2022年、ロシアの戦争のせいで、交易所の物価は高騰。さらに、地球温暖化やEUの毛皮輸出禁止により、昔通りのイヌイットの生活が脅かされて、どんどん漁師が減っていました。罪深いことに、資本主義は辺境の地に暮らす民族の生活を脅かしています。