狩猟採集民のように走ろう!

狩猟採集民について学びながら、現代社会や人間について考えるブログ

コロナとオリンピックとつぎつぎになりゆくいきほひ

私、日本はコロナを封じこめたはずだと思うんです。島国ですから。台湾やオーストラリアやニュージーランドは新たな大きな波の発生を抑えています。

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ウイルスは人とともに移動する。だから人の動きを止めればいい。──大昔からの常識です。ところが、昨年1月下旬、安倍晋三首相(当時)が春節にはいる中国に向けて訪日歓迎のメッセージ動画を発信、インバウンドを狙ったために中国からウイルスを招いてしまいました。その後、空港検疫が甘かったため、卒業旅行に行った学生などからヨーロッパ株が入ってきます。GoToトラベルキャンペーンという愚策が始まったのは7月22日、当初除外されていた東京が対象に加わったのは10月1日でした。

ただいま第4波のまっただなか。日本の空港検疫は早いわりに精度の低い抗原検査で、水際対策になってないと言われます。インドで猛威をふるう変異株に感染した人が都内で見つかっています。

まさかと思っていましたが、今年の3月12日、全国の実効再生産数が1を超えた状況で聖火リレーがスタートしました。第4波のピークが見えない本日も、どこかを走っているそうです。

東京オリンピックやパラリンピックを開けば、国際コロナ見本市になること必定です。「懸命にがんばっているアスリートが可哀想だろう」という言い方がありますけど、国民のためのリソースである医療体制や従事者をオリンピックのために一部割かなきゃいけないのか、私にはまったくわかりません。子供の運動会が安全に開催できない状況で、世界の運動会をやるなんてね。オリンピック利権にむらがる人たちは「ガキが校庭走ったって誰も儲からんだろ」って恫喝するんでしょうけど。

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丸山眞男は「歴史意識の「古層」」という論文でこんなことを書いています──。

世界の神話には「つくる」「うむ」「なる」という基本動詞があるが、日本では「なる」という発想様式が基底にある。加えて「つぎ・つぎつぎに」、「いきほひ」という重要キーワードを朱子学や国学の学者が書いた文書から拾い出し、それらを組み合わせた「つぎつぎになりゆくいきほひ」こそが日本の思惟意識の古層だというのです。中国やヨーロッパからいろんな思想が輸入されても、古層は揺らぐことなく引き継がれていきました。

(略)「つぎつぎになりゆくいきほひ」の歴史的オプティミズム[楽天主義]はどこまでも(生成増殖の)線型[ルビ:リニアー]な継起であって、ここには凡そ究極目標などというものはない》。

本論考では戦争や戦後の諸問題について言及しませんが、たとえば、東郷茂徳の証言は丸山の念頭にあったはずです。東京裁判で三国同盟に賛成だったか反対だったかと問われた東郷は「私の個人的意見は反対でありましたが、すべて物事にはなり行きがあります」と言いました。

「つぎつぎになりゆくいきほひ」の思考パターンが生み出すのは「いま」の連続だといいます。日本人はオプティミズムに基づき、後先考えず突っ走る傾向にあり、理想や完成に向かうなんてことは考えません。原発事故の尻拭いを子や孫の世代に押しつけても知ったこっちゃないんです。

神代のころからいきほい(時勢、大勢、権勢)は徳なんだそうですよ。「オリンピックなんてやってる場合か」「過去の失敗に学べ」などと言っても、日本では通じないのかもしれませんが、現実問題としてオリンピック中止は避けられず、敗戦やバブル崩壊や原発事故のように日本に打撃を与えるでしょう。

何年かのち、布マスク配布、GoToトラベル、イソジンうがい、オリンピック優先、病床逼迫、ワクチン入手などの失敗を問われた政治家や学者もこんなことをいいそうです。「私の個人的意見は反対でありましたが、すべて物事にはなり行きがあります