エルマン・R・サーヴィス『民族の世界──未開社会の多彩な生活様式の探究──』を読みました。初刊は1958年。伝統的な社会を段階的に整理してまとめています。翻訳は抄録で、23の社会のうち、10を紹介しているらしい。
目次は以下のとおりです。
・バンド
アンダマン諸島人
カラハリ砂漠の!クン・サン(ブッシュマン)
・部 族
上部ナイル河のヌアー族
アメリカ南西部のナバホ族
・首長制社会
メラネシアのトローブリアンド諸島民
ポリネシアのタヒチ島人
・未開国家
ペルーのインカ帝国
南アフリカのズールー族
・現代民俗社会
ユカタンの村チャンコム
モロッコの村
サーヴィスは、血縁的小集団から徐々に人が多くなることで、人びとの暮らしや意識が変容していくことを示しています。
血縁的小集団であった人びとは移動するため財産を持ちません。平等分配社会で、男女や子供の区別がなく、一神教ではもちろんない。定住をはじめ、園耕、牧畜などがはじまると、財産ができ、部族間抗争が起きるようになります。首長がいる社会でも、まだ仲間内では平等分配的ですが、徐々に階層が生まれていき……徐々にわれわれの知る社会に近づいていくのです。
学術書だから面白さを求めてもしかたありませんが、アンダマン諸島人やブッシュマンの社会がいちばん面白く、次第に驚きのない社会になっていきます。だから後半はなかなか進まず、まいりました。
人類学の古典的らしいんですが、類書を一冊だけ読みたいという方には尾本恵市『ヒトと文明』をおすすめします。
民族の世界―未開社会の多彩な生活様式の探究 (講談社学術文庫)
- 作者: エルマン・R.サーヴィス
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 1991/03
- メディア: 文庫
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ヒトと文明: 狩猟採集民から現代を見る (ちくま新書1227)
- 作者: 尾本恵市
- 出版社/メーカー: 筑摩書房
- 発売日: 2016/12/06
- メディア: 新書
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