トロント最高の医師が教える世界最新の……(長い)

トロント最高の医師が教える 世界最新の太らないカラダ

トロント最高の医師が教える 世界最新の太らないカラダ

  • 作者: ジェイソン・ファン,多賀谷正子
  • 出版社/メーカー: サンマーク出版
  • 発売日: 2019/01/08
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
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最近、やたらと「〜が教える(がやっている)最強(究極)の〜」という長いタイトルが多いとお嘆きのあなた! 私も同感です。

『シリコンバレー式 自分を変える最強の食事』
『スタンフォード式 最高の睡眠』
『酒好き医師が教える 最高の飲み方』
『医者が教える食事術 最強の教科書』
『世界一シンプルで科学的に証明された究極の食事』
『筋トレビジネスエリートがやっている最強の食べ方』
『世界のエリートがやっている 最高の休息法』
 エトセトラ、エトセトラ。

一時期は『一流の〜』とか、『〜が9割』とか流行りましたね。柳の下にはドジョウが何匹もいる、とは出版界の常識ですけど、それにしても……。

上記の本たち、シリーズではありません。版元も違う。日本人が書いたものもあれば翻訳ものもある。しかしカバーもよく似ています。白地にドカドカとタイトルが組まれることが多く、帯にはこれでもか、と文字が並びます。

そんな本買うか、と思っていたんですけど、ジェイソン・ファン『トロント最高の医師が教える 世界最新の太らないカラダ』を買ってしまったのでした。やれやれ。

原題は、"The Obesity Code"、サブは"Unlocking the Secrets of Weight Loss"、ん〜と、メインが「肥満の法則」や「肥満の暗号」で、サブは「減量の秘密を解き明かそう」くらいでしょうか。それがなにゆえ『トロント最高の医師が教える世界最新の太らないカラダ』になるんじゃろか。米Amazonで原著の本文を見ると、内容は同じでも、邦訳はいかにも安っぽい実用書みたいになってます。

中身も平凡な本でした……とは、ところが言えないのだ。すごく刺戟的な一冊でした。かなり入り組んだ、情報の多い本ですが、かいつまんで書きます。

瘦せるために走り始めた人もあるでしょうけど、運動で瘦せるなんて期待しないほうがいいと、本書に書かれています。私の実感では「走ること」は、減量のトリガーになる気がしますけど、永続的なものではありません。ウルトラマラソンなどを走っていても案外太っているランナー、いますよね。

いずれにしても、

《瘦せるためには、消費カロリーを増やして摂取カロリーを抑える》は間違い

という著者の説明はそのとおりだと感じます。

著者は数々のデータを示しながら(巻末に参考文献や論文が列挙されています)カロリー計算や低脂質ダイエットに効果がないことを書き、太る原因はインスリンだ、と断言しています。インスリンとは、膵臓から出る血糖値を下げるホルモンです。まさかインスリンそのものが人を太らせる……?

となると、2点ほど疑問が浮かびます。

(1)現代の狩猟採集民には塊茎などから糖質を70%以上摂取する人たちもあり、彼らはとくに太っていない。問題は、砂糖と精製された穀物なのか?

(2)糖質を食べたときのように血糖値は上がらないが、タンパク質を食べてもじつはインスリンは分泌されると聞きました(この本によると、食物が通過するさい胃から分泌されるインクレチンというホルモンに反応し、インスリンが出てくる)。それは前にも聞いたことがある。ならば、タンパク質も抑えるべきなのか。

著者は、まず、砂糖と精製度の高い炭水化物はカットすべきと書きます。人工甘味料もダメ。そして、とくに脂肪分の少ない肉なども少なめにするべき……。

良質の脂質は構わない。マーガリンなどトランス脂肪酸はダメ。1日に何度もおやつを食べるのはやめるべき。朝食もとくに要らない。朝食や間食をすすめるのは食品業界の策謀である、などなど。

ふむ。低炭水化物高タンパク質食を心がける私(単に甘いものが苦手なだけ?)としては脂肪の少ない肉(赤身や鶏の胸肉)を減らすのは不満ですが、エビデンスは重んじます。再検討しましょう。

これまた私の実感ですが、人間の身体にホメオスタシス(恒常性)という機能がある限り、ひとの減量すれば身体は元に戻ろうとする、10年かけて太ったぶんは10年かけて瘦せなければならない(10年かけて太ったぶんを1年で戻したら、9年間維持しなければならない)気がします。

著者は、長年太っている人は、インスリン抵抗性ができているため通常の量では身体が反応せず、結果的により多くのインスリンが必要とされると書いています。つまり、太っている人は瘦せにくい悪循環に陥っている。なにかのダイエットで急に瘦せても、ホメオスタシスにより元通りになることは多くの実験例により明らかです。毎度お馴染み「リバウンド」ですね。

ならばインスリンが完全に出ない状態をつくろう、と著者は提唱します。

それすなわち間欠的ファスティング(断食)なのでした。

結論はわりと単純でしたが、そこに至る道が探偵小説のようで面白く、知的好奇心をくすぐられました(ここに書いたのは一部です)。

もちろんすべてが正しいとは限らない。こういうものは疑ってかかり、自分の身体で実験してみるべきです。断食、興味があるんですよね。私が少しでも近づきたい狩猟採集民だって食事を抜く日はあったに違いない。そのうち試してみます。