狩猟採集民のように走ろう!

狩猟採集民について学びながら、現代社会や人間について考えるブログ

『奴隷のしつけ方』

少し前に、マルクス・シドニウス・ファルクス著/ジェリー・トナー解説『奴隷のしつけ方』(橘明美・訳、ちくま文庫)を読みました。

私は、階級のない狩猟採集社会を知ってから、人間がどうして主従関係をつくるのか気になってしかたありません。タイトルに「奴隷」とあらば、つい手にとってしまうのです。

マルクス・シドニウス・ファルクスというのは古代ローマ帝国の架空の人物で、11章にわたる奴隷のトリセツ──奴隷の買い方、使い方、罰し方など──は、アメリカの古典学研究者ジェリー・トナーが古い文献を読んで書いています。念のため書きますが、本書に書かれる奴隷は、大航海前なので、アフリカ系ではありません。戦勝国が、負けた国から奴隷を連れてくるのです。

スパルタクスが首謀者となった反乱軍を生まないためにアメとムチを使い分けていかねばならないので、ご主人さまも大変らしい。皮肉で書きますが、21世紀の資本主義が資本家と社奴によって成立しているのだとすれば、組織のトップはこの本が参考になるかもしれません。[裏金づくりに余念のない自民党幹部は、この手の本を読んで官僚や検察を支配しているのかもしれ……ウッ………………バタン]

奴隷はいつまでも奴隷とは決まってなくて、自由になる解放奴隷もいたそうです。時代は少し違うんですが)、ストア派の哲学者エピクテトスは元奴隷だったと聞きます。解放奴隷によって自由人になったのだと合点がゆきました。

いちばん面白かったのは、政治学者・栗原康の解説です。全部引き写したいところですが、私にも節度という観念はあります。一部だけ。

はじめからカネと権力をもっている主人たちに真正面から攻撃をしかけても、みな殺しにされてしまう。だったら、非対称的な闘いをしかけるしかない。横領、略奪、サボリ、トンズラ。さらにさらにとフォークロアで奴隷を離脱。不可視になれ。この身体に染みついた奴隷の名をうち捨てろ。なんどでも問いたい。きみの名は? スパルタクス! スパルタクス! スパルタクス! スパルタクス! スパルタクス! スパルタクス! われわれはみなスパルタクスだ。権力者どもにおもいしらせろ。奴隷の数だけ敵がいる。