狩猟採集民のように走ろう!

狩猟採集民について学びながら、現代社会や人間について考えるブログ

帰省して思い出す『群衆心理』の一節

土日と火曜日の勤労感謝の日に挟まれた平日を勝手に休日にして、3泊4日で広島を往復しました。実家に帰るのは2年半ぶりです。

広島駅北口で受けつけている唾液によるPCR検査は無料です(翌日、ショートメールで陰性の通知が届きました)。現在、広島県のコロナ感染者はほとんどなく、リソースのムダ遣いという県民もいますが、羨ましいシステムだと思います。

日曜日の昼間に友人の家に行き、庭でバーベキューをしました。主に、萩往還ウルトラマラニックを一緒に走った、広島のラン仲間です。一人は、トランスジャパンアルプスレースにチャレンジすべくトレーニングしているとのこと。

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実家の母親は体調万全とはいかないものの、年のわりに記憶もしっかりしているし、買い物に行くくらいのことはできています。家事もきっちりやっている様子。ただ、家事のあとでぼんやり見ているワイドショーの影響が怖い。政府を擁護する御用コメンテーターの意見を反復するのです。「野党は批判ばかり」「財源はどうするんだろ」「自民のほかにいないしね」などなど……。おおむね善良な人間だと思うのですが、なぜこんなトンチンカンなことを言うのでしょう。

国民への給付金が取り沙汰されているとき、ニュースやワイドショーなどの街頭インタビューを見ると、通りすがりの人たちが「バラマキだ」「財源はあるのか」「国の借金が増えるのが心配」と判で捺したように言います。決まり文句という点からしても、あれは私は誰かの受け売りではありませんか。今年の軍事費予算5.3兆円が最終的に2倍の11兆円になると報じられています。そう聞いて「財源はあるのか」と誰も問わないのはなぜでしょうか。

広島のテレビは、ローカル放送でカープの情報がたくさん流れます。ローカル球団がない他県の人は想像できないほどです。今週のある日のニュースでは木下富美子都議が広島でも厭というほど映りましたが、カープ・久里亜蓮投手の「FA権行使せず」が同じくらい報じられました。かくして広島の人は自然とカープファンになるのです。

野球のファンにさせられるくらいはご愛敬だし郷土愛の一種かもしれませんが、ぼんやりワイドショーを見て現政権に無批判になったりするのはどうでしょう。保守王国と言われる広島。今回の衆院選小選挙区でも、自公がすべての議席を獲得しました。河井夫妻による買収事件はもう忘れてしまったのか。

1895年に公刊された、ギュスターヴ・ル・ボン『群衆心理』より引用します。

大部分の個人は、特に俗衆のうちに立ちまじれば、自分の専門以外には、何らはっきりした理詰めな考えを持たなくなり、自ら身を処することもできなくなる。そこで、指導者が、その手引きになるのである。やむを得ない場合には、極めて不充分ながら、定期刊行物が、指導者のかわりをすることもある。定期刊行物というものは、読者たちに意見をつくってやり、彼等に出来合いの文句をつぎこんで、自ら熟慮反省する労を省いてしまうのである。(太字=引用者)

定期刊行物は、今ならさしずめテレビかネットです。自分で《熟慮反省》せず、テレビやネットで見聞きした《出来合いの文句》を反復する人が多過ぎませんか。

以前、SNSで「野党は批判ばかり」と冷笑していた知り合いに、「国会中継を見てみてください」と書くと、「毎日、9時のニュースで見てます」と返ってきたっけ。9時のニュースはニュースであって国会中継ではありません。

そんなことを考えながら東京に帰りました。