狩猟採集民のように走ろう!

狩猟採集民について学びながら、現代社会や人間について考えるブログ

ブルーインパルス

昨日はビックリしました。SNSに航空ショーの写真が一斉にアップされました。そういえば、新型コロナウイルスに対応してくれている医療従事者に感謝をあらわすためにブルーインパルスを飛ばすと言っていたな、と思い出しました。雲の少ない青空に白いスモークを一直線に引きながら飛行したそうで、そりゃカッコよかったでしょう。

賛否両論を読むのは面白かった。

「都心だけ飛ばしてメディアに撮影させることで政府広報をやっているんだ」という批判がありました。たしかに23区中心を飛んでいますが、米軍が管理する広大な横田空域を避けたらああなるんだと思われます。ブルーインパルスはオリンピックの予行演習(あるいは代替飛行)という面もあるかもしれません。

「ブルーインパルスを飛ばして医療従事者への感謝になるのか」は、なるほど素朴な疑問です。アメリカでは4月にサンダーバーズがラスベガスの病院上空を飛んだそうで、そのあたりからの発想でしょう。「飛行機飛ばす費用を医療に回せ」もそうかもしれませんけど、経費はいつも練習している範囲内かもしれませんし、いくらかかったのかは私にはわかりません。

この時期、メディアが病院の屋上に入っていたのがすごい。それが自衛隊中央病院なんですから、自衛隊全面協力。やはり政府広報(プロパガンダ)かなあ。ネットのニュース映像を見ると、駒込病院の方々も喜んでおられたようです。

「医療従事者への感謝なのだから素直に受け止めよう。見てて感動したし」は、《目的が良いものだから良い》と感じるバイアスが働いているようにも感じます。いつも出す例ですけど「江戸しぐさはウソだけどマナーとしては正しいのだからいいじゃん」とか「アイラブユーを月が綺麗ですねと夏目漱石が訳したというのはウソだけどロマンチックでいいじゃん」みたいな。立派な歴史修正主義なんですが。

私は自衛隊のあのショーに反対というより──警戒しているのです。頭のなかにアラート音が響きます。理由は、飛行ショーが勇ましくてカッコいいからです。

政府が医療従事者に自衛隊のショーをもって感謝の意を表す。東京の多くの人がみんな同じほうを見て感歎する。あっという間にSNSに勇ましくてカッコいい画像や動画が拡散される。ニュースはその模様を無批判に全国放送で流す……。

ナチスに似た制服を着たアイドルグループが非難されたことがありますが、なぜそんなことをしちゃうかというと、ナチのあれこれが格好いいからです。制服はヒューゴ・ボスによるデザイン、軍用車はワーゲン、ヒトラー政権下はオリンピックをプロパガンダに利用し、ベルリンオリンピックを記録した映画『民族の祭典』(レニ・リーフェンシュタール監督)は傑作です。ソビエト連邦時代の、黒と赤を基調としたプロパガンダポスターも素晴らしいデザインでした。

国家による勇ましくてカッコいいものはいとも簡単に全体主義につながります。警戒しすぎるくらいでちょうどいい。

私は国家的行事は冷静に眺めています。メディアや国民が昂奮して一体化するのが怖いんです。生中継では見ていませんが、昨年の改元フィーバーはひどかった。オリンピックも海外でやってほしい。みんなが同じ行動・思考をして多様性を失うのは心配です。青空を眺めるのは気持ちいいけど、国民がみんなで見るなら私は下を向きます。町内会の祭りやカープの優勝なら楽しむけど国の祭りとなると身構えてしまいます。

安倍氏は勇ましい言葉をつかってカッコつけようとするからタチが悪い。安倍氏はショーを眺めるため、わざわざ参院本会議を退席して一緒に動画におさまっています(→Instagram)。やはり政府広報(プロパガンダ)なんだろうなあ。支持率が少しアップするかもしれませんね。