狩猟採集民のように走ろう!

狩猟採集民について学びながら、現代社会や人間について考えるブログ

『創られた明治、創られる明治』

私はいまでも薩長(とくに長州)支配が続いていると感じています。戦後、一時期見えにくくなりましたが、新自由主義への転換から安倍政権にかけて明瞭になってきました。

2018年、政府が主導した「明治150年」というイベントは無視していました。

薩長はクーデターを起こして政権を奪取したあと、戊辰戦争で薩長と戦った奥羽越列藩同盟の人びとを「賊軍」と呼び、祀ることすらしなかったのです(それまでの日本では、祟りを怖れる意味もあり、敵も味方も慰霊しました)。賊軍の地はインフラ整備などが後回しにされ産業が発達せず、結果、財政支援を求めて原発を誘致することになります。17カ所54基の原発のうち、13カ所46基が賊軍の地域に建てられているそうです。

薩長嫌いの私は「明治150年」事業のとき「西郷どん」などガン無視しましたが、明治の誤謬を再検証した本が(明治礼賛本ほどではないにせよ)刊行されたことを喜んでいます、

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『創られた明治、創られる明治』という本を読みました。タイトルはエリック・ホブズボウムとテレンス・レンジャーが編んだ『創られた伝統』にちなんでいるそうです。巻末の対談で小沢弘明さんという方は《[『創られた伝統』の]原題は『インベンション・オブ・トラディション』The Invention of Tradition で》あり、《「インベンション」には「創造する」と同時に「捏造する」という意味もあるので、当然『伝統の捏造』と訳してもかまわない》と発言されています。すなわちこの本は、捏造された明治の歴史について書かれているわけです。

明治一五〇年イベントが一顧だにしなかった戊辰戦争の所業やアジアに対する加害、佐藤栄作が行った「明治百年」イベントとの比較、ジェンダーから見た明治の歴史、「明治一五〇年」にのっかる自治体とそうでない自治体(福島は「戊辰戦争150年」をやったそうな)などなど、いろんなテーマの論稿がありまして、やや総花的ではありますが、おもしろかった。

安倍晋三首相(当時)は、明治150年をことほぐのに津田梅子を持ち出して維新と女性活躍を結びつけましたが、明治15年にアメリカから帰国した梅子は日本ですぐに職を得られなかったんですよね。安倍氏が意図的に言及しなかった近代の負の部分を学ばないと現代日本の内実も見えません。

個人的には、平井和子さんという学者さんが書かれた「隠蔽された過去──明治とジェンダー」という章が面白かった。日本はわりとセクシャルマイノリティにおおらかだったとよく言われます。近代日本は徴兵制の関係で性を二分し、男にも女にも入らない人を異常としたそうです。女性には「良妻賢母」という新しい概念が生じました。

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「歴史は勝者に都合良く書かれる」とは、小学生のときに読んだ『火の鳥 ヤマト編』で教わりましたが、教科書まで官軍の視点で書かれているのではないかと疑ったことがないのでした。