NHKドキュメントのデマ

そろそろ走ることについて書こうかなと思っていたら、こんな記事が目につきます。

ひとや団体をおおまかに「東京オリンピックで儲ける側」か「儲けない側」かに二分するとしたら、河瀬直美監督もNHKも当然、前者です。つまりステークホルダーと言えます。河瀬氏は大阪万博のプロデューサーでもありますから、立場的に権力に近く、オリンピックや万博を擁護する人と考えられてもしかたありません。

最初にお断りしておきますが、NHKドキュメント「河瀬直美が見つめた東京五輪」を見ていません。Twitterで話題になっていたので「NHKプラス」に配信されるのを待っていましたが、アップされる気配がなく……。今回の「字幕に不確かな内容」問題で、封印されるのでしょう。

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何度も書いたとおり、私は東京オリンピック招致に反対でした。東北復興のリソース(人員やカネ、資材)を奪うからです。

東京に決定する直前の2013年8月28日に、私が某SNSに投稿した文章から引用します。

《東京オリンピックにはそもそも反対なのです。多額の招致費用を復興に使って欲しかったし、(2020年に収束できているかどうかもわからない)原発事故で海洋汚染を続ける日本がどの面下げて、とも思います。》

東京招致が決まったと知り愕然としたのは、同年9月3日の朝です。安倍晋三が「アンダーコントロール」とウソをつき、現小泉進次郎夫人が「お・も・て・な・し」と笑ったニュース映像を見て、眩暈を覚えました。爾後、盛りに盛った経済効果などを見せてワイドショーが騒ぐのが煩わしく、テレビから離れていきました。昨年のオリンピック・パラリンピックもほとんど見ていません。

私同様、最初から東京大会招致に反対している人はたくさんいるはずです。少なくとも私は「オリンピックを招致したのは私たち」「みんなは喜んだはずだ」とひとくくりにされたくありません。河瀬氏が「そういうふうに(みんなは喜んだというふうに)描く」は事実の歪曲、大袈裟にいえば歴史修正主義ではないでしょうか。

さらに、NHKが謝罪した下記リンクの映像です。

「……もう光熱代から全部一緒で」と話している男性の映像に、「実はお金をもらって動員されていると打ち明けた」というテロップがかぶさっています。《NHKによると、不適切な字幕》どころか、完全な捏造です。

私はコロナ以前には何度かデモに参加しましたが、もちろん日当が出たことはありませんし、動員を確認したこともありません。そもそも、オリンピックの反対デモにカネを出す動機はなんですか?

たとえば、昨年の衆院選で、岸田首相が茨城6区・国光文乃自民候補の応援演説に駆けつけたときに日当5千円で人が集められたことと、広島3区・斉藤鉄夫公明候補の演説会に旅費名目5千円で動員されたことが報じられました(いずれも東京新聞、→茨城6区、→広島3区。そんなのが常識になっている人たちは、他人がカネ感情抜きで行動することなど想像できないのかもしれません。

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思い出されるのは、2017年1月、沖縄の沖縄・高江のヘリパッド建設計画の反対運動に、どこかからカネが出ているとほのめかしたTokyo MXテレビ「ニュース女子」の件です。BPOが「重大な放送倫理違反があった」と発表するに至りました。今回のは、あれとまったく同じです。

テレビをあまり見ない私も、たまにNHKのドキュメントには感心しているんです。でも、このような捏造がありうるとなると、以後、NHKの番組全体を眉唾で見なければなりません。「河瀬直美が見つめた東京五輪」の問題はこれで終わることなく、きちんと検証したほうがいいと考えています。

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蛇足=東スポの記事もリンクしましょう。「プレスリー生きていた」(1989/5/14)や「人面魚 重態脱す」(1990/12/20)などの一面見出しで有名な東スポが、近年、政権批判をする数少ないメディアになっているから驚きです。東スポがNHKの不正を報じるなんて、天と地がひっくり返った気分です。

記事には、《「事実の捏造、ヤラセといったことではない。担当者の確認が不十分。(男性がデモに)参加したと思い込んで、字幕の一部に入れ込んだ」》とあります。思いこみで事実を捏(でっ)ち上げることを「捏造」と言うのでは?