狩猟採集民のように走ろう!

狩猟採集民について学びながら、現代社会や人間について考えるブログ

映画『あまくない砂糖の話』

私は甘いものが苦手で、うちに砂糖を置いていません。料理が得意な妻は、さまざまな店に行って自宅で味を再現させるのが趣味でしたが、結婚後、とくに砂糖をたくさん使うアジア料理を受けつけなくなりました。私のせいで味覚が変わったと文句を言いますが、「じゃあ、砂糖のある生活に戻りたい?」と訊ねると、「戻れない」と言います。彼女はときどきデザートを食べています。

私の場合、親が甘いものを食べなかった(子どもの誕生日などで両親はケーキを食べなかったなあ)ので、大人ってそんなものだと思っていました。大人になるとビールを飲みましたが、タバコをやめるとビールも甘く感じられました。男女に限らず、同世代の友人がFBやInstagramに甘いデザートの写真をアップしていると、いまだに驚きます。

しかし、何百万年も続いてきた狩猟採集生活には砂糖なんてなかったんですよね。甘い食べ物はたまに獲れる蜂蜜くらいです。果物も根菜も、品種改良していないので今ほど甘くはありません。──とそれに気づいてから、砂糖なし(私の場合、穀物も少なめ)の生活に確信を持ちました。

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昨晩Amazon プライムビデオで『あまくない砂糖の話』(2014豪)を見ました。

白砂糖を大量に食べたらどうなるか──監督デイモン・ガモーみずからが人体実験する映画です。ドキュメンタリーですが、CGを使うなど、見せ方にいろんな工夫が凝らしてありました。私は、ユーモラスなエンタテインメントに感じましたが、別の人にとっては苦痛かもしれません。

砂糖の成分はショ糖(スクロース)と呼ばれ、ブドウ糖と果糖からなり……と、このへんのことは映画かWikipediaでご確認ください。さて、ふだん砂糖を摂らない生活をしている男性デイモンが、一般のオーストラリア人が摂取する1日スプーン40杯(160g)分の砂糖を、60日間にわたって摂ることにします。ジャンクフードやお菓子を食べなくてもいいんです。スーパーマーケットにある「健康的」といわれる加工品(低脂肪ヨーグルト、シリアル、果物ジュースなど)で充分それだけ摂れますから。

彼は体調の変化を感じながら、肥満大国アメリカに渡り取材しています。企業が最適な甘さ(至福点)の研究をして開発した商品を売り、コマーシャルで子どもの心をつかんでしまえば、砂糖中毒のできあがり。食品企業はずっと儲かります。研究機関に金を出して、不健康の犯人が「脂肪」や「カロリー」であるという論文を発表してもらえばいいのです。

結果、デイモン・ガモーは躁鬱に悩まされ、どんどん太りました。躁鬱に悩まされ、さまざまな数値が悪化。摂取カロリーは以前と変わらなかったそうです。

オーストラリアの先住民アボリジニの現状が悲しい。狩猟採集をしていたころは病気がなかったのに、スーパーで食事を買うようになってからさまざまな病気に見舞われているそうです。

「精製された砂糖は極力控えましょう」という、たったそれだけのことを啓蒙するだけで事態は大きく改善するはずなのに、巨大な食品産業が人々を砂糖中毒にし、健康を蝕みながら膨れ上がっています。資本主義社会が労働力のみならず人の健康まで搾取しているのだと気づかされます。

唐突ですが、世界地図や歴史を鳥瞰しながら書かれた川北稔『砂糖の歴史』(岩波ジュニア新書)はおすすめです。

アメリカの子どもたちは……この話は次回また。

あまくない砂糖の話(字幕版)

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  • 発売日: 2016/10/20
  • メディア: Prime Video
 
砂糖の世界史 (岩波ジュニア新書)

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  • 作者:川北 稔
  • 発売日: 1996/07/22
  • メディア: 新書