狩猟採集民のように走ろう!

狩猟採集民について学びながら、現代社会や人間について考えるブログ

映画『フェド・アップ』

『あまくない砂糖の話』を観たついでに、気になっていた『フェド・アップ』(2014米)も観賞しました。監督 Stephanie Soechtig。タイトルは「うんざり」という意味らしい。アメリカの小児肥満を扱ったドキュメント映画です。食品産業や政府のカラクリがあるのはおおむね承知していることで驚きませんけど、太った子どもが「瘦せられない」と涙を流すのを見るのはつらい。彼らが太るのは怠惰で運動不足だからではなく、社会が正しい情報を隠しているからなのです。

…………以下、ネタバレかも。ご注意を…………

1980年にはゼロだった十代の糖尿病患者が、30年後にはたくさんいて問題になっているそうです。心臓病で死ぬ子もいるとか。いまや子供の5人に1人が肥満なんだそうです。

「瘦せるには摂取カロリーより消費カロリーを増やすこと」と、さんざん聞きました。しかし肥満の主たる原因は糖質です。とくにアメリカ人は砂糖を摂りすぎます。砂糖が脂肪に変わる仕組みはググってくださいませ(最近は糖質を摂ったさい膵臓から分泌されるホルモン・インスリンそのものが肥満の原因だという人もいます)。ビリー隊長より糖質制限のライザップ。

この映画にも、肥満と砂糖の関連を指摘する専門家はたくさん登場します。でも、その情報が米国中になかなか共有されてません。1970年代後半から砂糖業界が猛烈なロビー活動をして、肥満の原因は高脂質や高カロリーや運動不足のせいだとミスリードしてきたからです。

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砂糖には中毒性があります。食品加工業界はテレビコマーシャルなどで甘い加工食品を子供に売ろうとしてきました。砂糖中毒にしておけば永続的に業界が潤うからです。

[追記=たまたまNHK-BSで『がんばれ!ベアーズ』(1976米)をやっていたので最後の30分を観たんです。大人と子供の関係が興味深い映画ですけど、ケンタッキー、マクドナルド、ピザハット、デニーズがあからさまに出てきて、『フェド・アップ』を観たあとだけに胸焼けしそうでした。ベアーズの監督(ウォルター・マッソー)はバドワイザーやクワーズを飲んでいる。全部アドバタイジング。企業が映画に出資しています。NHKで広告やっているようなものです]

80年代、レーガンが給食費を削ったのに合わせ、ジャンクフード業界が学校に入り込みました。小学校の食堂にコーラの自販機を設置し、ランチにマクドナルドやピザハットなどのジャンクフードを提供するようになりました。80年代から砂糖の消費量は倍に増えたそうです。ミシェル・オバマが改革しようと試みましたが挫折しました。

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いまも悪者は「カロリー」とされ、スーパーには「ローファット◎◎」や「ダイエット◎◎」がたくさん並んでいますが、食品の8割には砂糖がたっぷり入っています。それなのに小児肥満の子は「運動不足だ。カロリー過多だ」と瘦せないのは自分の責任だと思い込まされ、糖尿病や心臓病の恐怖に怯えています。

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アメリカの肥満問題も新自由主義による資本主義暴走のなれの果てなんですね。ひとの健康まで搾取して儲ける奴がいるんです。映画の最後は少し希望のもてる終わり方……だったかな。

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何度か同じこと書いていますが、「虫歯になる」という一点だけ取っても、砂糖は人間に合わないことがわかります。熱したデンプンも同じです。何百万年の人間の歴史からすれば、穀物を食べ始めたのはつい最近。砂糖を摂りはじめたのはごくごく最近のことです。