狩猟採集民のように走ろう!

狩猟採集民について学びながら、現代社会や人間について考えるブログ

『ミッション:「サタンの最後の砦」に挑んだ宣教師』

『ミッション:「サタンの最後の砦」に挑んだ宣教師』(原題『THE MISSON』)というドキュメント番組が昨年ナショジオチャンネルで放映されました。

インド領アマンダン諸島のひとつ、北センチネル島に、外来者を拒絶するセンチネル族が住んでいます。2018年、キリスト教福音派の宣教師であるアメリカ人の若者ジョン・チャウが彼らに接近し、矢で射殺されました。

狩猟採集民は平和的だと読んだのちこの事件を知り、やや混乱しましたが、さらに学んでいくうち、以前、センチネル族に接近した人が、現地民を連れ去るか、彼らにとって未知の病気を流行らせたのだろうと推察していました。

はたして、そのとおりでした。

1880年、当時十代だったイギリス人M・V・ポートマン(Mauris Vidal Portman)がアマンダン諸島のセンチネル族と接触し、大人2人と子ども4人を連れ去りました。大人2人はすぐに死んだため、子どもを島に帰しましたが、このことがセンチネル族を排他的にしたというのです。

インド国立人類学研究所T・N・パンディットは何度もセンチネル族との接触を試みましたが、今では彼らに近づくべきではないと話していました。「彼らも人間でバカの集団ではない。他の部族の衰退を見てきた。たとえば大アマンダン人。オンゲ族も不幸な目に遭った」

かつてピダハンに伝導を試みたダニエル・E・エヴァレットが登場。未開の人びとに布教する必要はないと話します。エヴァレットは、長年ピダハン族と暮らし、彼らの言葉を研究して布教のチャンスを窺いましたが、今の生活に満足している彼らにアマゾンのに神は必要ないと悟り、最終的には自分自身もキリスト教を捨てました。彼が書いた『ピダハン』は必読ですよ。

欧米の人々は未開の土地に行き、命を賭けてまでキリスト教を布教することが善いことだと考えています。「食人の習慣がある」などと事実をねじまげても、善導しようとするのだ──と、きちんとそこまで伝えた番組でした。

★   ★   ★

以下、個人的なメモ。

番組で紹介された記録映画や本。ジョン・チャウに影響を与えたかもしれません。

  • Through Gates of Sprender:エクアドルのアウカ族への布教
  • End of The Spear:エクアドルのワオラニ族(アウカ族と同じらしい)を改宗させアメリカ中で「神の勝利」と讃えられた。
  • 『The Last Island of The Savegers』アダム・グッドハートの著書。北センチネル島のことを描く。著者は映像に何度も登場。
  • Cannibal  Island:アンダマン諸島ジャワラ族は死んだ男の頭蓋骨を首から下げる習慣があり、それを食人習慣があるかのように描く。
  • The Last Tribes of Mindanao:フィリピン・ミンダナオ島のタサダイ族
  • Man in Search of Man:アマンダン諸島の先住民を記録したフィルムと思われる。北センチネル族と接触を試みるシーンは番組に何度も登場。
  • The Peace Child:1962年、ニューギニアの人食い人種サウィ族を伝道する話らしい。