『ピダハン』の感想(2/2)

ピダハン―― 「言語本能」を超える文化と世界観

ピダハン―― 「言語本能」を超える文化と世界観

 

ダニエル・E・エヴェレット『ピダハン』(みすず書房)で紹介された、ピダハン族の特徴や生活ぶりをいくつか列挙しておきます。

 ピダハンの家族関係は、西洋人にもなじみやすい領域だ。親と子の愛情表現はあけっぴろげで、抱き合い、ふれあい、微笑み合い、たわむれ、話し、一緒に笑い合う。これはピダハン文化のなかで、真っ先に目につく特徴でもある。(略)親は子どもを殴らないし、危険な場面でもないかぎり指図もしない。乳飲み子やよちよち歩きの幼児(おおよそ四歳か乳離れするまで──乳離れすると一転活動を求められるようになる)は好き放題が許され、手放しで愛される。

◉ピダハン族には「交感的言語使用」が見られない。つまり「こんにちは」「さようなら」「ご機嫌いかが」「すみません」「どういたしまして」「ありがとう」に相当する言葉がない。

◉彼らは夜あまり寝ない(昼間、よくうたた寝をする)。朝5時くらいから活動を始める。男たちが漁に出て、女と子どもが採集に出かける。

◉狩猟と採集に充てられる時間は、1人につき1週間あたり15〜20時間。ただし、彼らは働くことを楽しんでいて、西洋の労働の概念ではとらえられない。

◉食べ物をわれわれほど重要視しない。空腹を自分を鍛えるいい方法だと考えている。《日に一度か二度、あるいは一日じゅう食事をしないことなど平気の平左だ。ピダハンたちが三日の間ほとんど休みなしに、狩りにも行かず漁にも行かず果実を広いにも行かず、もちろん備蓄の食料もなく、ずっと踊りつづけているのを見たこともある》

◉彼らは締まった体つきをしているが、都会に行くと暴飲暴食して15kgくらい太ってしまう。しかし、帰ってくるとたちまち元の体型に戻る。

◉ピダハンは自分に厳しく、年配の者やハンディのある者に優しい。

◉親族をあらわす言葉は数語しかない。
 マイーイ=親、親の親、さらに一時的ないし恒久的に従属を示したい相手。
 アハイギー=同胞(男女とも)。
 ホアギーまたはホイーサイ=息子。
 カイ=娘。

◉子育てが面白い。
焚き火に向かって歩いて行く幼児を止めたりしない。その子が火傷して泣いてから、叱りつける。調査のために撮影していた映像に、親の背後でナイフを持って遊ぶ幼児の姿が映っていた。自分を傷つけてしまうのではないかと動画を再生しながらヒヤヒヤしていると、その子がナイフを落とした。すると、親がそのことに気づき、拾ったナイフをまた子どもに持たせた。(もしもケガをしたら、そのときに初めて叱るのだ)
 そうやって育てられた子どもは肝の据わった、柔軟な大人に成長し、一日を生き抜く原動力が自分の才覚とたくましさであることを知っている。

◉葬式や結婚などの儀式はない。 

◉性に関してはかなり自由。思春期前後からためらいもなく性行為をする。ダニエルは、多くのピダハンが性交していると推測し、それが帰属意識・仲間意識の強さにつながっていると考えている。