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ジェームズ・C・スコット『反穀物の人類史』

ジェームズ・C・スコット『反穀物の人類史』(みすず書房)について。

私は読んでいませんが、C・スコットには『ゾミア』という大著があります。国家にしたがわない少数民族や、国家から逃げてきた人々の集まるアジールが東アジアにある、という話です。国家に属さない人々を研究するアナーキズムの研究者なのでしょう。

『反穀物の人類史』は、こんなことが書かれていました──。

よく、「人類は定住し、農業をはじめ、国家を誕生させました」と段階的に説明されますが、話は単純ではなく、原始国家はどんどん生まれては崩壊していたそうです。

国家の定義を領土・城壁・徴税・役人の存在だとすると、紀元前3000年くらいが初期国家らしい。ただ、ほとんどの人は国家の外で、狩猟採集や遊牧などで暮らしていました。その状態が4000年も続いたと言います。

初期の国家は湿地帯に誕生しました。王は構成員に穀物を育てさせます。作付面積がわかりやすい一年草で、収穫日も同時期であるため課税しやすいのです。メソポタミアの初期国家で楔形文字ができたのは、まさに税金を納めさせる必要があったから。

しかし穀物を主体に食べると食の多様性が失われ栄養失調になりやすいうえ、農業を主体にすると、旱魃、虫害、塩害などで飢饉の可能性が高まります。さらに、大勢の人や家畜が密集するとコロナのような人獣共通感染症が起きやすくなる(人間の移動が感染を広げることは知っていたらしい)。国家を維持するためにはマンパワーが必要で、戦争をして奴隷を集めなきゃなりません。エネルギー問題(燃料である木材を確保すること)もたいへんでした。

王制が三代も続けば長持ちしたほうらしい。国家が維持できなくなると、人は生業を狩猟採集や遊牧などに転換します。

タイトルの反穀物とはすなわち反国家と同義なのでしょう。 文字として残る国家の記録は、国民でない人々を「野蛮人」と総称しています。じつは何千年も、野蛮人の黄金時代でした。辺境で暮らしていた人のなかからは匈奴のような騎馬民族も生まれ、漢からカネを巻き上げたりもしました。 野蛮人の黄金時代は紀元1600年くらいまで続いたそうです。