何年か前の8月12日夜、電車に大学生くらいのカップルがいました。ふたりともマジメで聡明に見えます。小さな声で不思議な会話をしました。
女の子「今日って、仏滅?」
男の子「仏滅?……さあ」
女の子「じゃあ、原爆の日?」
男の子「いや、広島も長崎も何日か前」
女の子「そう……」
……しばらく沈黙……
……しばらく沈黙……
男の子「あ、今日は飛行機が墜落した日」
女の子「そっか」
二人にとって、すべてが生まれる前の、歴史上の出来事なんで脛。女の子が口にした「仏滅」は謎でしたが、仏滅を「よくないことがあった日」と勘違いしているんだろうと、あとで気づきました。
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日航機墜落は1985年8月12日のできごとです。
その日の私は、恥ずかしながら二浪の身の上で、安アパートに1年こもって受験勉強をしていました。広島市の中心部からやや北の、トイレ共同の小さな部屋で、小さなラジオから日航機墜落のニュースが流れます。中国地方のローカルテレビをやっていた坂本九が乗っているということですが、繰り返し読み上げられる搭乗名簿に坂本の名前はありません。機体が見つかることを祈りながら明け方寝た記憶があります。
気が高ぶったのかすぐに目覚めてしまい、午前中、なんだか不安な気持ちで本通りをブラブラしました。見た目は普通どおりに歩いている人たちが不思議でしたが、私は私で普通に歩いているように見えたかもしれません。
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日航機事故の話をテーマにした本はいくつかありますが、最近読んだなかで衝撃的だったのはこれです。陰謀論なのかどうなのか、ご自身でご判断を。