狩猟採集民のように走ろう!

狩猟採集民について学びながら、現代社会や人間について考えるブログ

走り始めた理由(2)

 →「走り始めた理由(1)」の続き

 私は、いや、人間はなぜ走るのか

フルマラソンを人並みに走れるようになってから映画を見たり本を読んだりする時間がどんどんなくなりました。
世の中には「ランニングは自己管理能力を高めて仕事の効率も上げてくれる」みたいなことを言う人がいます。贔屓のひきたおしじゃないかと私には思えます。仕事は大好きなのできちんとこなしていますが、フルマラソンの翌日など仕事の効率が悪くなるのは明らか。朝ランしないのも、疲れてボーッとしてしまうからです。
ジョギングが趣味だと言うと、ヘラヘラ笑いながら「健康的だねえ」という人もたくさんいます。不健康の巣窟・出版界に身を置いているので、健康の象徴みたいなジョギングは馬鹿にされるのです。しかしランニングだって度を越すと身体に悪いでしょう。活性酸素の上昇や故障のリスクを理由にやめろという人もいます。
運動不足解消に始めた私も、故障と紙一重のつもりでレースに臨んでいるのです。

クリストファー・マクドゥーガル『BORN TO RUN』が翻訳出版されたのは2010年でした。裸足同然で走るタラウマラ族や、100マイルのトレイルランナーたちの姿を通じて、「人間がどうして走るのか」を追究したドキュメントです。BORN TO RUN、つまり「走るために生まれたヤツ」は、メキシコの部族やウルトラトレイルの選手たちのことを指すんだろうと思って読んでいました。

ところが。
「なぜ動物はヒトに進化したのか」という話に撃を受けました。二足歩行により脳が発達して武器を使うようになる前、ヒトは何百万年も道具なしで暮らしていたんです。膂力も瞬発力もなく、猛獣に襲われれば簡単に食われてしまうヒト。動物としては弱すぎて退化しているようじゃないか……?
そんな疑問を抱いたユタ大学のデニス・ブランブル教授たちがあれこれ調べると、ほかの動物と比べて、ヒトに「ひとつだけ」優れた点が判明しました。
それが──
「長く走る能力」なんだそうです。
道具を持たなかったヒトは、一頭の動物を何時間も執拗に追い続け、くたくたになったところを捕獲していたのです。
開いていた本から腕がにょきにょきっとはえてきて、私を指さした気がしました。そして本が言ったのです。

  「走るために生まれたのはお前だ!」

私はしかたないと思いました。健康的だねブームにのってるね村上春樹本の影響だね……と、どんなに蔑まれても私は走り続けようと思いました。
つまり、私は走るために生まれてきたから走っているんです。

 走るのをやめたい?

あと数行、蛇足を。
観たい映画、読みたい本が山積みなんですが、いくつかの目標に到達しなければ、ランニングが中途半端になってしまう気がします。それらの目標をクリアしたら、走る量を半分にしてほかのことにも取り組みたい。
だから、こうも言えます。
「走るのをやめるために走ってます」

BORN TO RUN 走るために生まれた~ウルトラランナーVS人類最強の”走る民族”

BORN TO RUN 走るために生まれた~ウルトラランナーVS人類最強の”走る民族”

  • 作者: クリストファー・マクドゥーガル,近藤隆文
  • 出版社/メーカー: 日本放送出版協会
  • 発売日: 2010/02/23
  • メディア: ハードカバー
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