狩猟採集民のように走ろう!

狩猟採集民について学びながら、現代社会や人間について考えるブログ

階級

 思い出したこと。

 大学を卒業してから12年間、私は会社勤めをしたのです。中規模の会社でしたが、バブル景気の最後のほうだったので、大卒・短大卒あわせて同期は27人以上いました。きちんと数えたことはありませんが、約半分は退社か転職しています。斜に構えた同期が多く、「出世なんてするつもりはない」と口々に言っていました。同じく、私も好きな仕事ができれば肩書きなんてどうでもよかった。

 じきに不景気になり、いわゆる氷河期が到来。就職できた私はラッキーでしたが、あいにく後輩が入ってきません。会議で、「この案件を誰に担当してもらおう」となると、下っ端の私が「やります」と発言しない限り、みんな黙りこみます。無言の圧力です。多忙でしたが、いろんな仕事をやらされたぶんスキルは上がりました。

 入社数年後のある日、役員から会議室に呼びだされました。一般的には主任といわれる役職に私を昇進させると言います。断ったんですが、「君が受けてくれないと、あとの人が昇進できなくなる」と説得されました。他人に迷惑をかけちゃうのかとしばらく考え、承諾しました。

 私は同僚の役職に興味がなかったのです。さすがに関連部署の部長クラス以上は把握していましたが、課長も係長も主任も平社員も区別せず、話していました。

 昇進話の噂が広まった数日後、先輩のXさんやYさんが、飲み明かしたような赤い目をして私を睨みました。洩れ伝わってきたところによると、2人は昇進人事がおかしいと、前夜クダを巻いたらしいのです。みんなが肩書きを気にしていることも、そのとき初めて知りました。

 同じ日、1階に降りるためエレベータに乗りこむと、7、8年先輩だった経理部のZさんがいて、2人きりになりました。Zさんは言います。

「お前、こんど昇進するんだってね。ということは、3年先輩の某くんや某くんや某くんや某くんや2年先輩の某くんや某くんや某くんや某くんや某くんや某くんや1年先輩の某くんや某くんや某くんや某くんや某くんや(以下略)を抜いたわけだ」

 ぞっとしました。組織にいる人たちはそんなことばかり考えているのでしょうか……。私は誰が何年上でどんな肩書きかなんて知らないのです。Zさんがすらすら列挙した名前の半分は顔が浮かびません。4階から1階に降りる数十秒のあいだに、私は、階級社会の現実を思い知ったのでした。役員に内示を取り消してくれと言ったところ、「もう遅い」と言われました。

 ほぼ下っ端の私は、仕事が増えつづけたため鬱になり、退職。フリーランスとして生活しています。会社員時代の上司や同期が役員になったり部長クラスになっていることは素直におめでとうと言いますが、うやらましくはありません。私が会社に残っていたら、早死にしたか、今より10歳くらい老けていたはずです。

 ただ、退社してひとつだけ後悔していることがあります。ベテラン社員が私に叩き込んでくれた仕事のやりかたを後輩に伝えなかったことです。その会社の仕事のしかた、ずいぶん劣化して見えちゃいます。