狩猟採集民のように走ろう!

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『黒いワールドカップ』

デクラン・ヒル『黒いワールドカップ』(山田敏弘訳、講談社)を再読しました。ドキュメンタリーとして面白いし、なによりワールドカップでの八百長が生々しく語られています。『あなたの見ている多くの試合に台本が存在する』よりおすすめです。

仮に違法であろうとも、カネの臭いがするところに人は流れていきます。たとえば、負ける可能性が高い試合を戦う場合、選手はより稼ぎながら負けることもあるのです。「敗色濃厚なんだから、どうせならカネもらって確実に負けよう」という具合に。

言うまでもありませんが、なぜフィクサーがカネをばらまいて選手や審判を買収し、試合を操作するかといえば、サッカー賭博で大きなリターンが見こめるからです。

著者は、主にアジアの裏社会が工作したアジアやヨーロッパのサッカー界の八百長を詳述したあと、ワールドカップで行われた取引にも言及します。アジアのあるフィクサーは、とくにガーナに太いパイプを持っていたらしく、2004年アテネ五輪のガーナ対日本戦(ガーナの0対1)を操作したのだと語ります。もちろん、口先だけの可能性もあります。フィクサーは、2006年ドイツワールドカップの数試合を買収したと豪語しました。著者は実際にドイツに渡り、彼が工作したという4試合の結果を見守ります。

デクラン・ヒルはさまざまな八百長の証拠を集めたあと、FIFA会長ブラッターにも会っています。ブラッターは、国際試合に不正な介入があることを肯定も否定もしないのでした。

では、2022年のカタール大会に八百長はあるのでしょうか。……試合を見るだけで判断できる人はいないでしょう。キーパーがファンブルしたりディフェンダーがクリアミスしたことで相手の足許にボールが転がることが故意なのか、アディショナルタイムを過ぎて主審がなかなか笛を吹かないのが誰かのためなのか、判断できないのです。わざと負けようとするチームも、失点したら、肩を落とします。

カタール大会をほとんど見ていない私が言いますけど、八百長回避の努力は見られる気がします。ビデオ判定(VAR)の導入もその1つ。また、初めての女性審判員が選出され、コスタリカ対ドイツ戦では初めて女性が主審を務めるといいます(→NHK)。女性の審判は、日本の山下良美さんふくめ6人いるそうです。男性の審判は、賄賂だけでなく女性の誘惑に弱いことから、2007年、ヒルは八百長対策の1つとして女性審判の起用を提案しました。提案を聞いたFIFA幹部は「ばかばかしい」と一蹴したそうですが、15年後に実現、喜ばしいことです。

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たまたま夜中に目が覚めて、「ああ、日本が試合をしているんだよな」とスマホで見ると、スペイン相手に日本がリードしていました。アディショナルタイム合わせ、15分くらい観ていました。まさか、日本がドイツとスペインに勝つとは。サンフレッチェ広島にゆかりがある森保一監督を応援しているので、ひとまず安心しました。生中継を見ていたサポーターのみなさん、おめでとうございます。