狩猟採集民のように走ろう!

狩猟採集民について学びながら、現代社会や人間について考えるブログ

知里幸恵『アイヌ神謡集』

書き忘れていましたが、知里幸恵を扱ったNHKの100分de名著「アイヌ神謡集」を見ました(→名著123「アイヌ神謡集」知里幸恵 - 100分de名著)。

アイヌの言葉や文化を研究されてきた中川裕千葉大学名誉教授の解説、アニメーションや朗読もたいへんよかった。ナレーションはアイヌの母を持つ宇梶剛士でした。

知里幸恵は、1903年(明治36)に生まれ、わずか満19歳の1922年(大正11)に亡くなったアイヌの女性です。無文字社会のアイヌに伝わるカムイユカラ(神謡)を書き留め、和訳した『アイヌ神謡集』を残しましたが、彼女は公刊の前年に心臓発作で亡くなりました。弟・知里真志保は北海道大学の教授となり、アイヌ語研究で大きな功績を残しています。

私が彼女を知ったのは、2002年くらいだと思います。生誕100年を前に、岩波文庫がフェアでもしていたのではないでしょうか。豊かな文学性に驚き、その生涯を知るべく藤本英夫『銀のしずく』なども読みました。あれはどこの文学展だったかな、「銀のしずく」の生原稿を見たっけ。

アイヌ語と日本語を能くする彼女の才能を見いだし、アイヌの謡を日本語に訳すよう促したのは金田一京助です。結果、一冊の傑作が世に出たのですが、病弱な彼女に完成を急がせ、空気の悪い東京に呼び出して死期を早めてしまった金田一を、私は好きになれません。

100分de名著では、アイヌの世界観や、カムイユカラの特徴(とくに、同じフレーズが何度も繰り返されるサケヘの話が興味深かった)、さらに知里幸恵が文学者として優れていたことなどが語られました。

スタジオにも陳列されていた『熱源』を読んだあとに見たのです。あの小説には金田一が幸恵を早逝させたことを悔やんでいる場面がありました。