吉岡利貢『毎日長い距離を走らなくてもマラソンは速くなる』に、こんなことが書いてあります。(引用内の太字は原文ママ)
筋肉の収縮力のみで加速するのは、スタートして最初の10歩ほど。あとは地面を力強く踏み込んだときの反発力が推進力になります。強く踏み込んでも地面は凹まないので、そのエネルギーはそのままカラダに跳ね返ってきます。
重心の真下に力強く着地するイメージをもつことで、この跳ね返りをロスなく前進する力に変えられるのです。
さらにブレーキをかけた走りでは、地面に足がついている時間が長くなるので、制動時間を短くするように弾むように走ります。これが東アフリカ諸国のランナーによく見られる、いわゆる「バネを使った走り」です。
ランニングエコノミーの高い走りがポンポンと弾むような走りだとすると、ランニングエコノミーの低い走りはペタペタと足を地面に置いていくイメージです。
著者は、日本人選手は練習で距離を踏むため、結果的に衝撃の少ないすり足走法になってしまい、ランニングの効率を落としていると書いています。
しかし例外がないわけではないとして、名前を挙げているのが野口みずき選手。動画を見るとたしかに素晴らしいバネです。「メダル候補たちの武器」野口みずき - 北京オリンピック(nikkansports.com)にあるとおり、野口選手は身長と同じくらいのストライドで走るそうです。彼女はストライド走法の代表格とわれますが、ケイデンスも196.5歩/分なんですね。そりゃそうか。ストライドとピッチを高めなきゃあんなタイム出ませんよね。
「野口純正氏の分析」を引用させていただきます。
選手/レース | サイズ | タイム | ストライド(身長比) | 歩数/分 |
---|---|---|---|---|
野口みずき 02年名古屋 |
150cm 40kg |
2:25:35 | 147.9cm(98.6%) | 196.5歩 |
野口みずき 07年東京 |
150cm 40kg |
2:21:37 | 151.5cm(101%) | 196.9歩 |
高橋尚子 01年ベルリン |
163cm 46kg |
2:19:46 | 145cm(89%) | 209歩 |
渋井陽子 07年東京 |
164cm 47kg |
2:34:19 | 151.6cm(92.4%) | 195.2歩 |
1万メートルレースのときの上下動が、野口選手5.94cm、高橋選手5.39cmともあります。身長比を考慮すると野口選手は上下にはずんでいますが、一般的に見れば、それほどでもないんじゃないでしょうか。ちなみに、野口選手の上下動を身長174.8cmの私に置き直すと、6.92cmだそうです。ガーミンによるランニングダイナミクスによれば、私の上下動は8.9cm(フルPBの新潟Cityマラソン)とありますが……。
アテネ五輪の金メダル獲得後、野口選手はケガに悩まされます。「走った距離は裏切らない」という有名な言葉があり、少なからず市民ランナーにも影響を与えています。野口選手の故障の原因がもしも練習しすぎなら切ない。復活を祈っています。
一昨年でしたか。10人ほどで、4:30/kmの30kmペース走をしていたら、とても小柄な女性がものすごいスピードでピューッとわれわれを抜き去りました。複数回抜かれたので、彼女はあのペースで長い距離を走っていたことになります。後ろ姿しか見なかったのですが、あれは野口選手じゃなかったかなあ。
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