足底筋膜炎とグラストン・テクニックと私

足底筋膜炎の発症
 2012年2月の東京マラソン、17〜18キロあたりでしたか、突然、右足裏にパチンッと未知の衝撃が走りました。なんだろう? レースでは、その後も、1、2度おなじ衝撃を感じましたが、気にせずフィニッシュ。
 それが足底筋膜炎の始まりだったのです。
 徐々に悪化し、左右とも足裏に痛みが走るようになりました。朝起きたらじんわり痛み、夕方走っていたら足裏に強力なゴムパッチンを喰らったような、釘を打たれたような激痛が襲います。
 踵の痛みが代表的なようですけど、私の場合は土踏まずの上のほうでした。フォアフット着地のせいかもしれません。
 4月に病院に行くと、やはり足底筋膜炎と診断されました。オリンピックに帯同したこともあるというスポーツドクターは「走りすぎですよ。休みなさい」と湿布を出してくれました。「わかりました。2、3日休みます」「2、3日じゃ治らないかもしれませんよ」「では4、5日休みます」……結局2週間休み、整体で正しい身体の使い方を教わりながら回復を待ちました(特注インソールなどでは根本的な解決にはならないので頼らない方針)が、治まりません。足底筋膜炎をネットなどで調べてもたいてい「決定的な治療法はないが、3週間から3年で自然に完治する」なんて書いてあるだけです。3年も待っていられるか。試行錯誤しながらジョグで月間400K、多いときは500K走っていました。瀬古選手はケガしていたときも、ジョグをしていたと言います。
 そのときの自己分析では、原因は《足首の可動域の狭さ》《足の外旋ができていない》《レースで履いていたターサーが合わなかった》《腓腹筋が張っていた》ことなどです。発症する前、ふくらはぎはカチカチでした。
 
足底筋膜炎より痛い(?)グラストン・テクニック
 秋になり、スピード練習を始めると、バチンッ、バチンッと、震度7クラスの激震が走ります。地震にたとえたくなる衝撃なのです。当時のラン日誌には「右震度3」「左震度1、右震度4」などと書いています。地「これじゃあ、今シーズンのレースは全部走れないな」と絶望して、深夜なんとなく検索していると、「グラストン・テクニック」という耳慣れない治療法がヒットしたのでした。
 何をされるかわからないけど、どうせ高い金を取られた挙げ句、「治るまでは休め」と言われるのがオチだろう……と期待せずに某治療院に行ったんです。
 うつ伏せに横たわり、金属製の棒で患部をグリグリしごかれました。

 ガリガリゴシゴシガリガリゴシゴシ……。

 これがまあ、痛いの痛くないの
 ううう、とうめきます。あまりの激痛に先生を蹴り倒そうかと思いましたが、最後に残ったわずかな理性で耐えました。終わったら全身汗びっしょり。治療代に敷いかれタオルに、汗で私のからだがプリントされていました。
 運動により傷ついた筋膜(筋肉を覆う膜)が治ろうとするさい、本来離れていなければならない別の筋膜と癒着してしまうことがあるらしい。間違って癒着した筋膜同士が、次に動くさい剥がれて痛みが生じる──これが足底筋膜炎だそうです。グラストン・テクニックとは、癒着してしまったた筋膜をステンレスの器具でゴリゴリ剥がし、正常な状態に戻そうとするのだ、と説明されました。アメリカ生まれの治療法です。
 一回目の治療が終わったとき、先生はこんなことをおっしゃいます。
「この状態なら一週間おきの治療で3、4回やれば痛みは治まります。練習を休まなくてもいいし、予定のレースも全部出られますよ」
 ええっ? 我が耳を疑いました。決定的な治療法はなく、自然治癒を待つだけの故障とどこにも書いてあるのに、1ヶ月で治る? この人、魔法使いか? 信じられませんが、痛いのを我慢して続けるしかありません。ほかに頼るものはないし。
 保険は適用されませんでしたが、税込2,100円也(消費税5%の時代です)。
 2012年11月6日のことでした。

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12月にレースを走れた!
 ランは休まず、整骨院までの8.5kmを片道もしくは往復走ることもありました。同じ力で施術されてもしだいに痛みは減っていきます。治療院を出てから足裏がヒリヒリするので見てみたら、真っ赤なミミズ腫れができていました。
 3、4回で完治するという先生のお見立ては残念ながら間違いでしたが、一週間おきの治療を7、8回繰り返すと、ほぼ完治しました。つまり、2月頭くらいまで、あのゴシゴシに耐えたことになります。私の足底筋膜炎は今まで診てきたどんな患者さんよりひどかったと言われました。えっへん。
 ハーフや11月のつくばマラソンは回避。しかし徐々に回復し、12月の防府読売マラソンには参戦できました。ペース走をやってなかったので不安でしたが、結果、3:13:51で無事完走。セカンドベストの成績で安堵しました。つづく東京マラソンでは自己ベストを更新できましたから、グラストン・テクニックには本当に感謝しています。

足底筋膜炎のその後
 筋膜リリースなどについてもあれこれ勉強しました。
 筋膜は筋肉を覆っている組織です。魚肉ソーセージを筋肉だとすると、ソーセージを覆っているオレンジ色のビニールが筋膜。隣り合った筋肉はそれぞれ独立して動きたいのに、筋膜同士がくっついてしまうと、自由を奪われてしまうのです。
 グラストン・テクニックは筋膜リリースの方法のひとつです。足底筋膜炎のみならず、肩こりなんかにも劇的に効くそうですが、あのゴシゴシを1度体験すると、肩こりを我慢するほうがマシだとみんなやめてしまうんだとか。なんにせよ、相当な覚悟が必要です。切羽詰まった人にしかおすすめしていません。

 私の場合、足底筋膜炎の原因は、ふくらはぎの筋肉の張りにあるんじゃないかと先生に言われ、足裏の次に、ふくらはぎを施術してもらいました。しばらく通って筋肉のしこり(硬結)や過去の肉離れの痕(瘢痕)などをとってもらうと、ふくらはぎがかなり柔らかくなりました。もちろん治療は激痛でしたが。
 振り返るに、足底筋膜炎発症のころはふくらはぎもコチコチでした。そんな状態で青梅マラソンと東京マラソンを2週連続で走ったことが故障につながったのでしょう。日々のケアは大切ですね。その後も、なにか違和感があったら、グラストン・テクニックでグリグリしてもらっています。
 足裏のバチンッはずっとおさまっていたんですが、つい先日、かすみがうらマラソンで友人のサブフォーをサポートしたとき、一年数ヶ月ぶりに痛みました。ぶっといゴムパッチンでした。震度7クラス。キロ5分半なら平気だろうと油断して、ASICSターサージールを履いていたんです。治療中、最後の激震に見舞われたときに履いていたシューズでした。二度履いて二度とも足底筋膜炎の症状がでたわけです。そもそも発症した東京マラソンではターサーブリッツを使っていたし、よほどターサーとは相性が悪いらしい。私の場合、レースも練習もアディゼロシリーズしかありえません。(2019年追記=アディゼロも boost になってから相性が悪く、今はASICSソーティ一択です)
 かすみがうらのあとで、2回ほどグラストン・テクニックをやってもらいました。いまは無事です。ひごろ、違和感があれば筋膜リリースでセルフケアしています。

 グラストン・テクニックは対症療法です。足底筋膜炎を予防するには、どうしたらいいか。あれこれ考えていますが、これはみなさんに披露できるレベルにあるかどうかわかりません。