1本の線の上を走るか、2本のレールの上を走るか?

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走るさい、1本の線の上を走るか、2本のレールの上を走るか……。

これまた問題です。最初のころは気にしていましたが、そのうち意識しなくなりました。漠然と自分は「2本のレール」派だろうと思っていたのです。ところが最近、自分の足許を動画でチェックすると1本の線の上を走っていたので驚きました。

最近、動作認知型トレーニングマシンを使えるジムに行っているのです。まえに書きました(→カンドくんを試してみた)が、小林寛道先生が考案した「正しい走り方」を身体と脳に記憶させるマシンです。

それらマシーンのポイントのひとつは体重移動のようです。支持脚にしっかり体重を載せるように指導されます。また、2本のレールの上を走るようにできています。

スポーツ・バイオメカニクスを研究される深代千之先生は短距離走のフォームについて《力学的に見ると理にかなった走り方は一つしかない》(『日本人は100メートル9秒台で走れるか』)と書かれています。長距離走も同じことが言えるのであれば「1本の線の上を走るか云々」問題にも正解があるはずですが……。

毎度おなじみ私のバイブル『賢く走るフルマラソン』で、田中宏暁先生はこう描かれています。

右足を前に出して一直線に走るには、腰をひねって内側に回転させなければなりません。そうすると安定させるために上半身は左腕と左肩を斜め前方に不利だし、右肩を引きます。1本の軸を中心に「腕と胸」と「腰」が逆にねじれるようになります。これはまったく無駄な動きです。
右腰と左腰の2本の軸を意識して、2本のレールの上を走るようにするとこのねじれを起こさずにすみます。

対して、岩本能史コーチは『非常識マラソンメソッド』でこう書きます。

ランニングは1本のライン上に左右交互に着地する1軸走法が正解です。人間の骨格は、歩行から走行へ移行すると自然にそうなるようにできています。歩行から走行に変わることで肩が回転して骨盤が左右交互に前に出ますから、無理なくストライドが伸びて1本の線上に着地します。

い、いったい、どっちなんじゃ!?

短距離も長距離と同じだといちおう仮定し、福島大学の川本和久監督福島大学陸上部の「速い走り」が身につく本から引用します。裏表紙側のオビに、速く走るための4つのポイントのなかに「二直線上に走る」があります。以下は、写真は転載しませんが、久保倉里美選手のフォームに対する説明文からの引用です。

一本の線上ではなく、二本の線上を走るイメージで走ります。二本の線といっても間隔があいた二本の線の上ではなく、陸上トラックのラインをまたぐくらいの感覚です。久保倉選手は③では左足の上に左腰を乗せ、さらに上体を左腰の上に載せています。④ではその反対に、右足の上に右腰を乗せ、上体を右腰に乗せて走っています。

これはつまり、小林先生のマシンと通じます。支持脚のうえに重心を置く、ということでしょう。

以上、ここまでの「1軸」「2軸」は、単純に「1本の線の上を走るか、2本のレールの上を走るか?」という意味だろうと思います。

ここに常歩(なみあし)研究所の「二軸理論」が入ってくると、少々混乱します。小田伸午『スポーツ選手なら知っておきたい「からだ」のこと』の記述を見ると──。

一瞬しか片脚立ちできない不安定性を利用して走るのが常歩の走り(二軸走)です。あるいは、動くことによって安定する走りともいえます(=動的安定)。

2軸ではあるけれど、ランニング中、片足で立っているフェーズでも重心は支持脚のうえに完全に載ってない、という考え方のようです(正しく理解できてないようであればご指摘ください)。

      ☆

さてと。

いろんな考え方があるでしょうが、私が今年取り組むこと(のひとつ)は、「2本のレールの上を走る」と決めました。

支持脚1本になった瞬間、重心が脚に載ることを意識します。ランニングは地面からの反撥を推進力に変えて前に進む運動です。だから脚に重心をあずけることでエネルギーのロスなく反撥力を得られ、推進力が増すはずだと愚考しました。2軸ですから、支持脚に体重を載せるためには上体をやや左右に揺らすことになります。臍やお尻など、身体の中心部が柔らかく自然にスライドする意識をもつつもりです。重心が左右に動かすためには、腕をまっすぐ前後にふるのではなく、引いた手を戻すさい、拳を胸の前あたりに持ってくるのがいいような……。

もちろん個人的な考え方なので、みなさんはみなさんで研究してみてください。岩本コーチがおっしゃるように《人間の骨格は、歩行から走行へ移行すると自然にそうなるようにできてい》る説が論文等で裏づけられ、信頼できると思えば、私だって簡単に「1本の線」派に宗旨替えします。

      ☆

私、以前から、黒人の歩き方って特徴があるなあと思っています(全員がそうじゃないとは思いますが)。スパイク・リーの映画に登場するダウンタウンの若者やヒップホップの歌手が、リズムを刻みながら左右に身体をスウィングさせながら歩きます。あの体重移動はランニング向きなのかもしれません。ボルトもふだん、そんなふうに歩いていませんか? アフリカ系のアメリカやジャマイカの選手が短距離に秀でているのはそんな動き方が身についているからかもしれませんね。……いや、単なる思いつきですが。

冒頭の画像は、2009年のボルト選手。彼は上体がやわらかく左右にスライドします。2本のレールの上を走っているよう見えるんですが……。1軸にすればもっと速くなるよ、という人もいるかもしれません。

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