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世界陸上の女子マラソンの選考について

増田明美さんが陸連の発表会見で疑問を投げかけた、と話題の、世界陸上女子マラソン代表選考。私は名古屋ウィメンズの終盤を見て前田彩里選手に感心しましたが、基本的にマラソン大会ウォッチャーではなく、選手のこともよく知りません。テレビ見ているより週末は自分のロング走を優先するものですから。
世界陸上の一件、どんなことなのかちょこっと調べてみました。
世陸女子マラソン選考で波紋 唯一Vの田中落選(日刊スポーツ)
増田明美さん異議「これでいいんでしょうか?」(日刊スポーツ)
増田明美さん、横浜国際V・田中落選に異議「びっくり」(スポーツ報知)
女子代表から外れた田中智美…日本陸連「内容で物足りなかった」(サンスポ)
などを参考にしました。

まず、女子マラソン代表の対象レースは、横浜国際、大阪国際、名古屋ウィメンズでの日本人3位以内と、北海道マラソンの日本人1位。重友選手と田中選手は以下の成績で代表の対象でした。
重友梨佐(天満屋・27) 大阪国際3位、2時間26分39秒(日本人1位)
田中智美(第一生命・27)横浜国際優勝、2時間26分57秒

重友選手が代表に選ばれたポイントは次のように説明されました。
【1】重友は我々の設定している(2時間)22分30秒を目指す走りだった。
【2】田中は序盤に先頭集団から離れたことがマイナスに働いた。(高い目標を掲げていく。最初から先頭集団にいないと勝負にならない。後ろからあげていって、22、23分を出したら評価はしますが)
【3】横浜は大阪、名古屋に比べて他の選手のレベルが劣っていた。
……ということのようです。

別のネット記事を参考にレース展開を比べてみます。
(複数ソースを見比べました)

  • 重友梨佐選手。
  • 大阪国際女子マラソン。2015年1月25日。
  • 晴れ 気温10.0〜12.0度 風向北0.7m-北東1.2m
  • lap 17:06/16:35/16:56/16:55/17:07/17:35/17:58/18:19/8:08
  • finish 2:26:39(前半1:11:15/後半1:15:24)
  • ペースメーカーは置かれなかった。優勝したタチアナ・ガメラ選手が積極的に引っ張る。ガメラ選手とともに先頭を走っていた重友は23Kで遅れはじめる。30Kでプロコプツカ選手に抜かれ、3位に。「思い通りのレースができた。今まで、弱いところがレースで出てしまうことがあったが、それを振り払うレースができた」

  • 田中智美選手。
  • 横浜国際女子マラソン。2014年11月16日。
  • 晴れ 気温13.8度 東南東2.8m(スタート時)
  • lap 16:58/16:49/16:55/17:22/17:44/17:29/17:59/17:53/7:48
  • finish 2:26:57(前半1:11:56/後半1:15:01)
  • 大会側が指示したペースメーカーの設定は17分05〜10秒だったが、15Kまで16分台で飛ばす。岩出、野尻両選手はついていくが、田中は追いかけない。10K地点では先頭から22秒遅れ、オンゴリ、ロティチ両選手と併走。野尻が遅れ、30Kは田中、ロティチ、岩出、オンゴリの4人が先頭集団。37Kでロティチが仕掛け、岩出が遅れる。40Kでロティチが遅れ、田中とオンゴリの争い。ラスト50Mで田中が競り勝ち、優勝。


気候およびコース条件、レース展開が違うので単純に比較できませんが、陸連の記者会見について順番に考えてみます。
【1】について。
2時間22分30秒のタイムだと、1km3:23、5kmを16:53、ハーフを1:11:15で走らなければならず、重友選手はハーフまではたしかにクリアしています。
一方、前半を抑えた田中選手もネガティブスプリットというわけではありません。ハーフ地点で重友選手より41秒遅れています。暴走気味に突っ込んだペースメーカーは、本来17:05〜10/kmを指示されていたそうですから、予定通りのペースなら「22分30秒を目指す走り」はやらなかったはず。
そもそも、なぜ16:53/kmでなく17:05〜10/kmの設定だった理由がわからない。2時間22分30秒のタイムが重要だと陸連は周知徹底していなかったんでしょうか。
重友選手だって先頭争いに拘泥しなければタイムを短縮できたかもしれません。ともかく陸連は撃沈覚悟で飛ばす方を評価する方針らしいので、彼女は突っ込んだのでしょうか。そのあたりはわからずじまいでした。
【2】ですが……。
田中選手の場合、先頭の岩出、野尻両選手がオーバーペースで落ちてくると予想したならば、ともに2:23:22のタイムをもつオンゴリ、ロティチ両ケニア選手をマークするのがクレバーな選択に思えます。選手とではなく時計と戦うべきだったのでしょうか。
【3】は謎です。
横浜国際女子マラソンの招待選手には、2:18:58の記録(歴代5位)をもち、ロンドン五輪の金メダリストであるティキ・ゲラナ選手がいます。その日は6位。先日の東京マラソンでは3位でした。上記のように田中選手と競り合った、2:23:22の記録をもつ選手もふたりいます。
重友選手の走った大阪国際女子では、ベストタイムの筆頭はエレナ・プロコプツカ選手の2:22:56で、次がタチアナ・ガメラ選手の2:23:58。
招待選手のベストタイムだけを比較すれば横浜国際女子マラソンのレベルは低くありません。「横浜は大阪、名古屋に比べて他の選手のレベルが劣っていた」の発言は招待選手などに失礼で、その場しのぎの発言のようにも感じられます。

        ☆

スポンサーやテレビ局への配慮で、対象レースがたくさんあるため、こういうことが時々起こります。山下監督が「後出しじゃんけん」と言ったように、あとになって条件を加えれば、誰でもふるい落とせることになります。
増田明美さんは「すごく主観が入っているということですよね」と語ったそうです。天満屋の武冨豊総監督が陸連の女子マラソン部長であることを指しているのでしょう。

選ばれたからには、重友選手には頑張ってもらいたいと思います。上のほうのごたごたで彼女にプレッシャーがかかるのもまた理不尽です。

それでもやはり「優勝」という事実が軽視されている気がしてモヤモヤが残るのです。われわれ市民ランナーの大半は経験しないけど、中盤の駆け引きや終盤の競り合いを制して「勝つ能力」もエリートランナーには大切だと思うんですよ。
選考のやりかたを変えられないなら、選考基準を明確にするしかありません。今回の一件で「優勝よりタイム。撃沈覚悟で先頭争い」ということは明らかになりました。