走ることにも狩猟採集民にも関係のない、ただ思い出した冗談です。
昔、「タモリ倶楽部」の空耳アワーに出そうかな、と思ったネタがあったんです。
曲は、ビートルズ「ヘイジュード」。ラストでポール・マッカートニーが「ジュッジュード、ジュ、ジュドジュドジュド……」と合いの手を入れるあたり(→YouTube 4:58)です。あのリフレイン、たしか17回半続くんですよね。
組み合わせますのは新美南吉・作『ごんぎつね』のラストシーンです。私の拙い絵コンテともにご覧下さい。
おわかりでしょうか。
空耳アワーに投稿したらバカ受けだぞと1人で悦に入り、いちおう『ごんぎつね』のテキストを見ると、あらビックリ、兵十に「ひょうじゅう」とルビが振ってあるんです。てっきり「へいじゅう」だと思っていました。というわけで、このネタはボツ。
たまに思い出して友人に確認したら、「へいじゅう」派ばかりです。私だけの勘違いではないらしいのです。ははん、と私はそれで気づいちゃった。
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Wikipediaによれば、『ごんぎつね』(正確には『ごん狐』)は「赤い鳥」1932年(昭和7)1月号が初出。教科書に載ったのは1956年(昭和31)だそうです。
1946年(昭和21)年に告示された当用漢字表を見てみました。1981年(昭和56)に常用漢字にとって代わられるまで、当用漢字表は新聞の表記、新生児の命名までに影響を与えていました。むろん教科書もそうです。
すなわち、基本的に当用漢字表に載ってない文字、載ってない読み方は使わない方針なのです。
漢字制限の歴史にはいろいろなエピソードをうみました。たとえば、代用字。「反撥」の「撥」が使えないから「反発」にしておこう、というようなものです。「臀部」が「殿部」、「顚倒」が「転倒」とか、いくらでもあります。
当用漢字表に「兵」は載っていました。だけど、というか、やはりというか、読み方は「ヘイ」だけでした。教科書や新聞は当用漢字に従わなければならないので、新美南吉が「ひょうじゅう」とした「兵十」を「へいじゅう」に変えたのです。
ついでに言えば、けものへんも大幅に削られていて、狐とか狸とかもないのです。したがって、タイトルも「ごんぎつね」にしたんですね。
私は作者の決めた読み方や表記をこんなことで改めるべきではないと考えています。空耳アワーのネタのひとつくらい、どうでもいいわ。