映画『人生はマラソンだ!』を見ました。原題は『DE MARATHON』、つまり『マラソン』のようです。
「映画見るなら泣きたい」という方にはおすすめなのかなあ。個人的には「泣ける」は映画の良し悪しをはかる物差しじゃありませんが……。笑えるところもあるし、まず手堅い映画と言えましょう。オランダ映画は初めてかもしれません。お国柄というか、独特な感じはなかった。日本版のポスターは配色が苦手です。まあいいけど。
借金まみれの小さな自動車工場を救うため、スポンサーを見つけてマラソンを走ろうと決めた中年の経営者と従業員計4名。ある会社のロゴ入りTシャツを着てロッテルダムマラソン(制限時間6時間半)を走り、もし全員が完走すれば借金を肩代わりしてもらえるが、できなければ工場は人手に渡るという勝負に打って出ます。彼らは真剣に走り始めますが、それぞれ個人的な問題をかかえていて、果たしてゴールできるか……そもそもスタートラインに立てるかどうか……というストーリー。
ディテールは面白いんですが、一映画ファンかつ一市民ランナーとして率直に申し上げれば100点満点中55点くらいの評価です。
彼らは非常にがんばります。パッとしなかった怠惰なおっさんたちが日々精進を重ねて練習し、30km走を黙々とこなしてしまうところなんぞ、格好いい。私は注意を払ってなかったのでわかりませんけど、映画が進行するにつれ、登場人物はほんとに痩せていくんだとか。
しかし、以下の理由で、私は評価を下げざるを得ません。
登場人物たちはランニングに心底魅了されたわけじゃなさそうです。最後のシーンにはがっかりしました。彼らにとってマラソンは「工場再建のための手段」でしかなく、生活を守れるならエベレスト登頂だってよかったのです。マラソン版「フル・モンティ」という宣伝文句もありますが、それこそ男性ヌードでもよかった。
こういう一芸物の映画……たとえば、周防正行の『シコふんじゃった』や『Shall we ダンス?』と比べてみてください。周防作品では、始めた動機は不純でも、相撲やソシアルダンスの魅力を伝えるし、主人公だって競技そのものに敬意を払いますよね。この映画、みんなが惹かれるマラソンの魔力・楽しさを充分伝えていないんです。
個人的にはそれが作品の評価にかかわる大きな大きな「残念」です。
ところでマラソンは人生なんでしょうか。「あなたにとってマラソンはなんだ」と質問されたら、私は「生活のちょっとした彩りだ」とでも答えるでしょう。いや、カッコつけすぎだな。「趣味だ」で充分か。