先日来、何度も読み返しているランニングフォームに関する本です。著者・高岡尚司さんは、裸足でフルマラソンを2時間45分39秒(裸足ランの日本記録)で走られた方です(ランニングシューズを否定している本ではありませんので念のため)。
ときどき「裸足で走ればすべてが解決する」という意見を耳にしますが、私は疑っています。素足もしくは裸足系シューズを履いたランナーを観察すると、踵着地でおそるおそる走っている人が案外多い。アベベは裸足で世界最高記録を出したけど、たいていの人は、裸足になるとランニングシューズを履いたよりずいぶん遅くなるはずです。かくいう私もビブラム・ファイブフィンガーズではキロ5くらいまでしか出しません。
高岡氏は、裸足で走り始めてから、ふくらはぎを左右それぞれ3回ずつ痛めたそうです。故障を通じてたどりついたフォームの基本は、胴体を使って走るということ。私はいま「胸部から骨盤までを使って走り、手足はついてくるもの」という考えていますから、いい本に巡り会えました。
そのうえで、着地や腕振りなど、いろんな動きを解説しています。フォームやストレッチのモデルとなっているのは著者自身。写真がたくさん挿入されています。
私は、月に3〜4回、裸足系ランニングを取り入れています。VFFやサンダルで走ると、身体のおかしなところがビビッドに自覚できるというメリットがあるからです。
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さて、本文の内容に少し触れます。《胴体の動きは四肢の動きに先行する》《脚は自然についてくる》などの項目は私の考えを補強してくれます。「蹴ってはいけない」とか「踵着地はいけない」というのは、ランニング初心者には参考になるでしょう。
私がビックリしたところはたとえば……。
《接地時間は短ければいいわけではない》は初耳でした。
《大転子で加速する》も、どういうことなのか考えさせられます。いままで大転子を気にしたことがなかったんです。身体を台形に使うことで大転子が移動し、バネが生きるとあります。私なりには、支持脚になって踏み込む瞬間、その脚に体重がきちんとかかり、地面反力を全身で受ける姿勢のつくりかただろうと解釈しています。
著者が書くことが、アフリカ人の男性ランナーのフォームの解説になっているのがおもしろい。ケニアやエチオピアのランナーは(よく見たら全員というわけではありませんが)フォアフットで着地し、胸を出すようなフォームです。腕振りも似通っています。つまり、彼らは理にかなった走り方をしている、ということでしょう。
日本人は体格や筋肉の質が異なることがあったとしても、目指す走り方は同じだと私は考えています。この本のフォームを完全に習得するには時間がかかるでしょうが、読者が真剣に考えることで、跳ね返ってくることが大きいという予感があります。
繰り返し読みます。