狩猟採集民のように走ろう!

狩猟採集民について学びながら、現代社会や人間について考えるブログ

『コン・ティキ号探検記』

島泰三『魚食の人類史』で、簡単に魚が獲れる例としての話が出て来たので、ヘイエルダール『コン・ティキ号探検記』(河出文庫)を読みました。その昔、子ども向けの本を読んだことはあります。

ポリネシアに点々と浮かぶ島に住む人たちは、大昔、太平洋が陸続きだったころに渡ったと思われていたそうです。ヘイエルダールは、インカのインディアンが筏で太平洋を横断したのだと仮説を立てましたが、誰も賛同してくれません。そこで、スペイン人が記録したインディアンの筏を再現して、ペルーからポリネシアを目指したのです。多くの人々は、バルサの木を麻の綱で縛った筏がすぐにバラバラになるだろうと予想していました。

つまり、ヘイエルダールほか総勢6人が1947年に始めた冒険は、インカのインディアンがポリネシアの祖先であると証明するのが目的だったのです。

今では、DNA研究や言語学などから、ポリネシアの人々は南米ではなく西の方から渡来したとわかっています。一瞬、読む気が失せかけたところ、他の本で知った北極探検家・人類学者のピーター・フロイヘンが登場。写真まで添えられていたので、興味が再燃しました。フロイヘンはヘイエルダールたちの冒険の後ろ盾になったことで、計画が進んだのだそうです。

読むうちに、面白いのなんの……。準備期間や、反対を押し切っての進水・航海中のトラブルや、航海の成功が与えた熱狂が伝わりました。『太平洋ひとりぼっち』を連想しました。ちなみに、コン・ティキ号は堀江謙一より15年早く、太平洋6人ぼっちの冒険です。

彼らは水や干し肉を持っていきましたが、筏の航海中、食うものに困ることはありません。朝起きると、甲板にトビウオなどが落ちているからです。飛びこんできたヤリイカを餌にマグロを釣ったりもしています。雨水を飲用にしましたが、生魚を食べると喉が潤うそうです。嵐が起きなくて魚が好きならば、筏の上で永遠に暮らせそうな気さえします。人類があまねく世界に広まっていけたのは、「魚を食べられる」ことと無縁ではないようです。