2021/6/11の東京新聞朝刊、北丸雄二さんのコラムにこんな話が紹介されています。
2022冬季オリンピック招致を目指していたノルウェーのオスロに対し、IOCがこんな要求をしてきました。
- 空港は一般客とは別の専用口を用意しろ
- バッハ会長到着時は滑走路で式典風に歓迎せよ
- 開会式前に国王と面会させろ
- その後にカクテルパーティを開け
- その費用は王室かオスロ五輪委が負担しろ
- 委員の車移動用に一般車両やバス進入禁止の専用レーンを作れ
- ホテルでは支配人が季節の果物とケーキを持って部屋に挨拶に来い
- ホテルのバーは委員用に震哉も延長営業しろ
- ミニバーには必ずコークを
- 競技スタジアムにもワインとビールを
そんな要求をされた《オスロは先行途中で立候補を降りました》だって。貴族か!? ああそうでした、ワシントンポストは今年5月、バッハ会長をぼったくり男爵と呼んだんだ。貴族です。
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以下は私の浅い知識です。
近代オリンピックの父といえばクーベルタン男爵。産業革命以降、イギリスで近代スポーツが誕生します。発掘により古代ギリシャの調査も進んでいました。そんな状況で、クーベルタン男爵は国際交流や教育を目的とする近代オリンピックを誕生させます。平和と友好を謳いながら、性差別、人種差別の意識を持っていて、「スポーツで鍛えることはは戦争の役に立つ」などと矛盾したことを言ったりしているそうです。
最初は万博に付随した運動会でした。帝国主義的な資本主義国家が中心です。多くの選手たちは、スポーツは金持ちの子息でした。万博から独立したのは、日本が初参加した1912年ストックホルム大会以降です。
クーベルタンは女性の参加は非実際的、退屈、不愉快、不適当だとして認めなかったのですが、フランス人女性アリス・ミリアの尽力により、1928アムステルダム大会でやっと女性参加が全体の1割になります。人見絹枝が800mで銀メダルを取ったのがこの大会でした。
1936ベルリン大会は大成功をおさめます。ナチスが国家行事として大会を利用、聖火リレーや記録映画を考案し、ナショナリズムを煽りました。喜んだクーベルタンは、「以後、ベルリン大会を踏襲すべし」と言ったそうです。
戦後の、とくに東京オリンピック以降はみなさんご存じのとおりです。
われわれが子供のころはアマチュアリズムという言葉がありましたが、東側諸国は国威を誇示するために才能のある子を集めてエリート教育をしていましたし、西側だってだんだんプロ化を推進しました。メディアの進化とともにスポーツは変質したのです。1984ロサンゼルス大会の興行的成功はオリンピックが一大利権であることを多くの人に知らしめました。♩金のためならプロ化も許す〜それがどうした文句はあるかあ。現在、メダリストに純粋なアマチュアなんていません。オリンピック招致には必ず黒い噂がつきまといます。
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クーベルタン男爵ら当初のメンバーは自腹で運営していたといいますが、大きな目で見れば、植民地支配していた資本主義国家の人々が搾取した金でおこなっていたともいえるのです。さすれば、最初から最後までぼったくり男爵がやっていたと言えなくもないような……。
そろそろオリンピックというもの、スポーツというものを根本的に考えましょうよ。
──東京オリンピックまであと17日。