狩猟採集民のように走ろう!

狩猟採集民について学びながら、現代社会や人間について考えるブログ

映画『KANO 1931海の向こうの甲子園』

何日か前のこと、帝国主義時代の朝鮮や台湾のスポーツについて読んでいて、やはり映画『KANO 1931海の向こうの甲子園』(2014台湾)は観なきゃならんな、と思い立ちました。台湾代表の嘉義農林学校が甲子園に出場した、史実に基づく映画です。監督 馬志翔/出演者 永瀬正敏、大沢たかお、坂井真紀、伊川東吾

抑えておきたい歴史的背景は以下のとおりです。

台湾原住民はオーストロネシア語族でした。17世紀から明朝再興派に支配され中国人が移り住みますが現地の人と言葉が通じません。日清戦争の末1895年に台湾は日本の統治下となります。現地民ははじめ抵抗しました(乙未戦争)が、徐々に日本に同化され、原住民と中国人は日本語という共通言語をもつことになります。……これを知っていないと、日本人がいないところでも日本語を使うシーンなど、理解できないところがあります。

映画は統治されてから約35年後。台湾では日本による近代化が進んでいました。

松山商で指導経験のある近藤兵太郎(永瀬正敏)が台湾の弱小チームの監督を引き受けます。彼の熱血指導により、選手たちは力をつけ、甲子園出場を果たします。試合の様子は台湾にもラジオで中継されていました。調べてみたら、日本本土の短波放送が聴けたそうです。

嘉農や中京商など相手チームの選手もプレーに不自然なところがなく(CGは多過ぎですが)、日焼けもしていて、きちんと野球をやっていました。初代甲子園球場のセットがよくできています。一方、実況中継のしゃべりかたや言葉の選び方は現代的過ぎました。当時の野球監督はユニフォームを着てなかったのかなあ?

ひたすら厳しいだけだった近藤監督も次第に成長していきます。ところどころ日本人以外の選手を侮蔑する邦人がいて、近藤がそれをたしなめるのですが、近藤がどうしてそういうふうに考えるにいたったのかはよくわかりません。選手に愛情を抱いたということでしょうか。

試合のシーンの興奮が映画の感想に直結してしまうので、スポーツ映画の評価は難しいんですが、外れがない感動的な映画と申せましょう。180分は長かった。退屈はしなかったけど。

先述のような事情で、嘉農のチームは、日本人、漢人、蕃人(台湾原住民)で構成されていました。もうちょっと漢人、蕃人の言葉や暮らしぶりを観てみたかった気もします。

ところで、近藤が妻(坂井真紀)相手に目隠し将棋をしていました。私は書道しながらそんなことできんわ。