『タテ社会の人間関係』

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講談社現代新書で中根千枝の著作を読みました。著中根氏は1926年11月生(大正15年。昭和元年は12月25日から)生まれの93歳。インドなどをフィールドワークした社会人類学者で、初の東大教授になった人だそうです。私が読んだのは以下の2冊です。

『タテ社会の人間関係』(1967)
『タテ社会と現代日本』(2019)

前者は私が生まれた翌々年の本で、なんと120万部くらい売れているらしい。古典と言っていいような日本人論らしいのですが、こないだ書店で見かけるまでまったく知らなかったのでした。前者の元になった論考「日本的社会構造の発見──単一社会の理論──」(1964)が『タテ社会の現代日本』の附録として添えられています。そっちのほうがわかりやすいので、『タテ社会の現代日本』一冊買えばこと足りるかな。 

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著者は世界との対比で日本の社会構造の特殊性を指摘します。日本社会は「資格」ではなく「場」を重んじる社会だそうです。

  • とは───一定の地域、(会社などの)所属機関
  • 資格とは──氏・素性(生まれつきのもの)、学歴・地位・職業(後天的なもの)、資本家・労働者・地主・小作人(経済的なもの)、男女、老若(生物的差)

とあります。会社や家の属性が重視されるということです。たとえば、日本の会社員は「◎◎社のなにがしです」と自己紹介する一方で、自分を労働者階級とは意識していません。

逆に、インドは「資格」を意識し、カーストの区別はあるけど、同じカーストで楽しく暮らしていて、日本の下層社会のような悲惨さはないそうです。そういえば、以前『菊と刀』(長谷川松治訳)に、日本は世界一のカースト社会だと書いてあって、「インドより日本が?」と驚いたものです。そして、軍隊でもヤクザでも会社でも部活でもいいんですが、日本社会には上下関係があります。

なかなか鋭いエッセイです。

ただ、平易な文章で広く浅く日本を考察するので、かえってわかりづらい部分があるのは残念です。「この章だけ一冊の本にして、300ページ解説してくれんかなあ」と感じるところが多々ありました。上記のインド社会との比較も例を挙げてじっくり論じてほしかった。また、日本の「場」における女性や子供の位置づけなどが書かれていないのは気になりました。

「資格」と「場」で社会構造を見るのは著者の独創らしいのですが、参考文献や引用文があれば、読者としては新しい発見があったかもしれません。

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タテ割り行政とよく言われますが、日本の学問も学際性が弱くて専門バカが生まれがちなタテ割りです。日本の労働力も流動性が低くタテ割り。日本の企業には派閥があるタテ割りです。政治は「味方」と「こんな人たち」のタテ割り。

一方、電機メーカーは同じようなテレビや家電をつくり、食品業界は似たような加工食品をつくり、外食産業は似たようなチェーン店を出し、テレビ局は似たようなワイドショーやクイズ番組やニュース番組や散歩番組やグルメ番組やドラマをつくり、独自性に欠けます。

タテを眺めれば狭い世界の上下関係が、ヨコを見ると均質な世界が拡がっています。

タテ社会の人間関係 単一社会の理論 (講談社現代新書)
 
タテ社会と現代日本 (講談社現代新書)
 
菊と刀 (講談社学術文庫)

菊と刀 (講談社学術文庫)