最近読んだ本より。
何年か前に買って置いてあった酒井シヅ『病が語る日本史』。有史以前の怪我の話から近代史にいたるまでの、いろんな病気と歴史の話でした。病気で歴史が変わることもありえるのですね。物の怪なんて項目もあり、おもしろかった。
一つだけ──。
感染症は、人の移動とともに起きます。日本にペストが上陸したのは1896年(明治29年)、横浜港から上陸した中国人が死亡したそうです。1899年(明治32年)、台湾から帰国した日本人が門司から横浜に帰る途中に発症して、広島で死亡。日を追って、神戸、大阪、浜松でペストにより人が死んでいます。東京市はネズミを1匹5銭で買い取ることにし、300万匹を処分しました(広尾の祥雲寺にネズミの供養塚があるとか→祥雲寺HPより)。それでも、綿花とともにインドから運ばれたネズミが原因となったため紡績工場で集団発生したりしています。防疫に努めたため、1907年(明治40年)に646人の感染者を出したのをピークに徐々に終熄に向い、1930年(昭和5年)に2人の死亡者を出したのを最後に国内でペストの感染者はでてないそうです。《このようにペスト防疫がうまくいったことは、日本がきわめて早く西洋化したことを物語っているが、日本人はペストの恐怖感を十分体験しなかった》と著者は書き、それにより西洋のような幾度となくペストの恐怖を味わってきたヨーロッパと同じような危機意識が備わってないのではないかと指摘していました。そうですね、新型コロナ対策にもちょっとつながります。ああいった都市封鎖はペストの歴史に基づくものなのかもしれません。