狩猟採集民のように走ろう!

狩猟採集民について学びながら、現代社会や人間について考えるブログ

映画『ミルカ』

しばらく室内バイクを漕ぐことにしました。いい機会なので、AmazonPrime Video で、陸上競技やトレイルをテーマにした映画を iPad で観ることにします。バイクを漕ぐあいだに映画が終わらないので、続きはパソコンで見ます。小さな画面で、途切れ途切れ見るなんて映画ファンではない……というお叱りはごもっとも。私だって基本的にはスクリーンで見たい派なんですけど。

第一弾は、公開時に見逃したインド映画『ミルカ』(2013)でした。かなりフィクションが入っていると思われますけど、インドの陸上競技選手ミルカ・シンの半生をモデルにしています。日本公開の直前、武井壮がラジオで紹介していたんです。武井氏自身も選手として一瞬登場しています(予告編にも映っているけどわかるかな)。

映画の冒頭は、1960年ローマ・オリンピックのレースから始まります。大人になったミルカ選手は陸上400mの世界記録保持者。金メダルを期待されていたが、リードを保って最後の直線を走っていたときに突然うしろを振り返り、失速。4位に終わったのでした。

そこから時代に翻弄されたミルカの少年時代と青年時代を往来しながらストーリーは進行します。

ミルカの少年時代、インド帝国が20世紀半ばにイギリスから独立しました。それを機に、インド連邦とパキスタンが宗教的な背景もあり分離独立の軋轢が生じます。パキスタンとの国境近くに住んでいたの一家は紛争に巻き込まれました。

生き抜いたミルカは軍隊に入隊してランニングの才能を見いだされ、苛酷な練習に耐えます。1958年、東京アジア大会で200m、400mで金メダルを獲得しました。(満員のスタジアムは市川崑らが撮った記録映画「東京オリンピック」の映像がそのまま使われています。聖火リレーや聖火台が映るところを除けば、合成の技術に不自然なところがまったくないのに驚きました)

1960年、ローマで敗れたミルカですが、彼にとってはオリンピックよりも大きな大会に出場することになります。そこから先は省略。涙もろい人はハンカチ用意です。

スポーツ映画につきものの昂揚が客観的評価をさまたげがちですが、佳い作品だと思います。コーチはじめ周囲の人がミルカにやさしい眼差しを注ぎ、ミルカが彼らに恩返しします。そのあたり、チェスを題材にした映画ボビー・フィッシャーを探して』に似た味わいでした。

もちろんインド映画ですから、恋愛や歌や踊りがふんだんに挿入され、上映時間が長いのです。日本公開版は153分とのことですが、オリジナルは189分らしい。もっと踊るんでしょうね、きっと。

主人公のファルハーン・アクタルはスティーブ・グッテンバーグを思わせる二枚目で、鍛え上げた筋肉やフォームはほんとうの陸上選手みたいでした。