九州を中心に豪雨被害が広がっています。被災されたみなさんにはお見舞い申し上げます。私も知り合いや、知り合いの家族が浸水の被害に遭ったようです。残念ながら、コロナの第二波がきた東京からボランティアに行くのは憚られます。些少ながら義捐金を振りこみました。
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人類史において農業革命と産業革命が人類の大きなターニングポイントであった、という意見はジャレド・ダイヤモンドもダニエル・E・リーバーマンも共通しているはずです。それらの変革は人類にとって決して良いものではなかった、という点でも。
農業により人口爆発が起き、動物と近接して暮らすようになって人獣共通感染症が生まれました。ペスト、結核、インフルエンザ、SARS、MARS、新型コロナウイルスなどは農耕以前にはなかったものです。ほかにも、栄養が炭水化物中心になって糖尿病が起きたり、野良仕事で腰痛が始まったり、狩猟採集社会には考えられなかったトラブルがあれこれ発生しました。人間の暦でいえば、農耕の開始は1万年くらい前です。私たちより500〜600世代前のこと。
産業革命が起きたのは、18世紀末から19世紀のはじめです。蒸気機関や石炭エネルギーの使用が始まり、すぐに重化学工業が始まりました。75年前に原子爆弾が投下され、戦後は公害などが問題になり、原発事故が起こります。20世紀半ばから文明の進歩を止めようとする動きもありましたが、世の中はどんどん「便利」になり、環境は悪化し、ひとは自力で動かなくなりました。産業革命が起きたのはわずか10世代前のことです。
さて。少し前、新型コロナウイルス流行によるロックダウンで、大気汚染が解消されたことが話題になりました。人間が息をひそめて自粛すれば自然が息を吹き返すのです。
残念ながら人類の存在こそが地球にとってのウイルスなのでした。生態系から飛び出し、動植物を絶滅させてきたのが人類なのです。ユヴァル・ノア・ハラリのベストセラーに拠れば、地球上の人間の総重量は約3億トン。牛、豚、鶏など、人間が食用に改変した家畜は約7億トン。対して、野生動物は約1億トンだそうです。毎日せまいゲージのなかで無精卵を生む鶏や、子どももいないのに乳を出しつづける牛は自然なのか反自然なのか? 青々としてきた田圃は果たして日本の「原風景」なのか?
日本で頻々と起きる豪雨災害や猛烈な夏の暑さも、アマゾンやオーストラリアの森林火災も、北極の氷が溶けるのも、人間の環境破壊によってもたらされた地球温暖化が原因らしいのです。であるならば、人類が地球のうえで生きていくためには、人間中心主義の「進歩」を止めて環境問題に取り組まなければなりません。
人類が地球にとってウイルスであるのは間違いないにしても、地球に死をもたらすほどのものではありますまい。45億年の地球の歴史のなかで1万年といえば、瞬きするくらい一瞬です。人類が滅亡したって、「それでも地球はまわっている」でしょう。
………なあんてことをつらつら考える日々。
わずか10世代で自然をぶっ壊した人類は、あと何世代生きていけるでしょうか。現時点で環境改善に取り組めば人類の延命に間に合うでしょうか。それともポイント・オブ・ノーリターンを越えてしまっているのでしょうか。