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検事庁法改正案のなにが問題か

Twitterで多くの著名人が声をあげ、あのNHKでさえ採りあげはじめたという検事庁法改正問題。よく知らないという方に、国会ウォッチャーの私が簡単にご説明しましょう。

今年の1月31日、安倍政権は黒川弘務検事長の定年を半年延長しました。黒川氏は2月8日に63歳の誕生日を迎え、定年退職するはずでした。送別会の日時も決まっていたそうです。稲田伸夫現検事総長は就任2年目となる8月に総長の椅子を譲ると言われていて、黒川氏はそこで検事総長になることが可能になりました。

大臣でさえ逮捕できる検察庁は行政のなかでも独立性が高いのです。ところが黒川氏は安倍政権に近いと噂され、O渕優子のドリル事件、A利明の斡旋利得法違反、A倍晋三の加計学園事件、A倍晋三およびA恵の関与が疑われる森友・桜を見る会、S川宣寿の公文書改竄問題などなど、数々の疑惑を揉み消してきたと言われます。ただいま河井克行・案里夫妻が捜査されていますが、近年これは異例なことです(黒川氏の人事に怒った現検事総長が捜査を進めているという話もあり)。

当然ながら、国会では異例の検察人事について野党が追及をしてきました。

森雅子法務大臣は黒川氏の定年延長は国家公務員法の解釈を適用したという説明をします。しかし、山尾志桜里議員は「検事の定年には検事庁法しか適用されない。国家公務員法の適用除外である」という過去の議事録を発掘し、その議事録を知っていたのかと2/10に問いただしたのです。森雅子法務大臣は「当時の議事録の詳細を存じ上げない」と動揺しながら言いましたが、のちに「知っていた」と強弁しています。ちなみに山尾氏は元検事、森大臣は弁護士です。

2/12日の国会で、人事院給与局長が検事に国家公務員法が適用されないルールを「現在も引き継いでいる」と答弁し、議会は紛糾。2/19に「1月22日に法務省から相談があるまでは引き継いでいる」と変更しました。現在とは2/12ではなく1/22のことだったと。なんだなんだ?

その後、森大臣は日付のない文書を出してきたり「口頭で決済した」と発言したり……。

3/9、小西洋之議員から検事に定年延長が必要になった理由を問われると、森大臣は、東日本大震災のときに福島県いわき市の検察官が市民よりいちはやく逃げ出したからだというデマ答弁を吐き、謝罪に追い込まれています。

YouTubeで過去の国会をご覧ください。与党政治家は中学生程度の答弁能力もありません。筋立てて説明できないことを取り繕おうとするから次から次へとボロが出てくるんです。森雅子大臣は気の毒と言えば気の毒ではあります。本来、前法務大臣・河井克行が担うはずの役割を押しつけられたんですから。あえて法曹家のキャリアを傷つけながら一部政治家を守るための論外な法案をむりくり説明しているのです。

いま審議されている検事庁法改正案は、黒川氏の定年延長をあとづけで正当化するような法案です。かねてより検討されていた九つの法案に検事庁法改正案(内閣が判断すれば検事の勤務延長ができる)を急遽さしこみ、それらを一時に通そうとしています。もしも夏に黒川氏が検事総長になった場合、解釈変更と改正案により68歳まで5年間検事総長を続けられるそうです。

安倍政権は内閣人事局で官僚の人事権を握り、イエスマンを出世させてきました。さらに自分たちを逮捕する権限を持つ検察もコントロールしようとしているのです。新型コロナのドサクサで強行採決する法案ではありません。

自民・泉田裕彦議員が「(略)検察庁法の改正案は争点があり国民のコンセンサスは形成されていません。国会は言論の府であり審議を尽くすことが重要であり強行採決は自殺行為です。与党の理事に強行採決なら退席する旨伝えました」とツイートしたらソッコー委員を外されました。

小学校の学級会で、「民主主義は時間をかけて合意形成を図るものであり、少数意見も尊重する。多数決は最後の最後」と私は先生から教えこまれました。しかし熟議しないうちに「ケツとろ〜」と騒ぐガキがいましたね。それが与党政治家の姿です。

ハッシュタグをつけて抗議する芸能人を罵る安倍応援団やネトウヨもあるようですが、「国民主権」の国なんだから誰だって政治家に抗議する権利はあります。

よ〜く考えてみてください。

検事の定年延長で得する国民なんていないのです。安倍応援団やネトウヨにも直接的には利害がありません(批判をかわすことでおこぼれが期待できるかもしれませんけど)。では、法案を通過させることで直接得する人は誰なのか? 一部の与党政治家と官僚あわせて、10〜20人くらいじゃないかと思うんです。名前を挙げれば、…………ウッ…………バタン。