狩猟採集民のように走ろう!

狩猟採集民について学びながら、現代社会や人間について考えるブログ

映画『ウインド・リバー』

気になっていた映画『ウインド・リバー』(2017米)をAmazonPrimeビデオで観ました。監督・脚本はテイラー・シェリダン。出演、ジェレミー・レナー、エリザベス・オルセンです。

予告編はサスペンスであることが強調されています。たしかに白雪のに鮮血が飛び交う現代の西部劇ですが、悲しく静謐なシーンもふんだんにちりばめられていました。

物語は、夜中、先住民の少女が雪のなかで倒れるところから始まります。彼女の死体を発見したのはは野生生物局の男性職員コリー・ランバートでした。白人であるコリーは先住民居住区で働いています。その日、彼は家畜を襲ったコヨーテを駆除するため見回りをしていたのでした。

少女は殺害された疑いがあるため、FBIの女性ジェーン・バナーが派遣されてきます。彼女は捜査協力を求められたコリーは、2人で足跡やスノーモービルの轍を探りながら真相に迫っていきます。頼りなかったジェーンが徐々に成長する過程がなかなかいい。

コリーが妻と別居(離婚?)した理由はのちに明らかになります。ジェーンとコリーの安っぽい恋愛話にならないのはよかった。あるシーンで明らかになりますが、彼女はコリーの恋人というより娘という役回りなのです。

コヨーテの親子を狙っていたコリーの銃弾はどこに向けられることになったのか……。

ネタバレになるのでここまで。

この映画が気になっていた理由は、アメリカ先住民居住区が舞台だからです。いわゆるインディアンは原始的な狩猟採集生活をしていたとはいえず──つまり私の興味の中心からは少し外れます。しかし、世界の狩猟採集民と同様、白人に土地を奪われ、言語や宗教などの同化政策を受けたり迫害された歴史を持つのです。ある日突然、白人がやってきて「ここからここまでは自分たちの土地だ。お前たちはあそこで暮らせ」と先住民を蹴散らしたのです。不動産王トランプの土地は本当に彼のものなのでしょうか?

舞台であるワイオミング州ウインド・リバー居住区は、ここ(Google Map)らしい。マイノリティーの彼らに与えられた土地が温暖で肥沃であるわけがありません。日本の観客はアメリカ先住民の悲哀がピンとこないでしょうけど、映画の根底にあるメッセージを読み取ってもらいたいものです。コリーの次のセリフがそれを端的にあらわしています。

「ここの人々は強制的に連れてこられた。雪と静寂以外はすべて奪われたそうだ」