狩猟採集民のように走ろう!

狩猟採集民について学びながら、現代社会や人間について考えるブログ

原ひろ子『極北のインディアン』

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30年余り前の話。小説家でも文学研究者でも根無し草でも、とにかく文学者になろうと考えて大学に進んだ私日本近代文学研究の泰斗であった紅野敏郎先生の授業を選択しました。最初の講義が忘れられません。先生はこうおっしゃいました。

「大学生になった皆さん、皆さん、毎日、大きな書店に行きなさい。新宿には紀伊國屋書店があり、高田馬場には芳林堂書店があります。神田・早稲田・本郷などの古本屋にも日参しなさい。そしてどんどん本を買いなさい。読まなくてもかまいません。あなたが読まなくても、あなたの子どもが読むでしょう。子どもが読まなければ孫が読むでしょう。どんどん本を買いなさい」

当時はなんか感激しました。今や家じゅう本だらけ。子どもはいませんけど。

紅野式で本を買いこんでおくと、ときどき面白い化学反応が起こります。前回、積ン読本から原ひろ子『子どもの文化人類学』(みすず書房、初版1979)を拾い上げて読んだらとても面白かったと書きました。さらに原さんの著書を調べると、うっすらと見たような書名がある……。書棚をごそごそ探ると、ありました『極北のインディアン』玉川大学出版部版

昨年の4月14日、八王子の古本屋を数軒回ったときにゲットしたなかの一冊です。1年前の私、ナイスプレー。人類学関連の本をたくさん買えたのがうれしく、お店に入ってビール数杯飲み、その日7冊の収穫をスマホで撮影していました。うち4冊は読んでないけどね〜。

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原ひろ子は東大が女性を募集したときの第一期生で人類学を学び、アメリカ留学中にヘヤー・インディアンをフィールドワークされました。1961年から翌年にかけて都合11ヵ月調査したとのこと。

本書は留学を終えて帰国したのち書かれ、1965年に刊行されています。当時まったく学術調査がなされていなかった狩猟採集社会に飛び込むなんてすごいことです。二十代の彼女のフィールドワーク自体が、当時の社会では信じられないほど進歩的だったはずです。このエッセイの読みどころは彼女の研究に打ち込む姿でした。

もっともヘヤー・インディアンの社会や考え方について詳述されてないという憾みはあります。その点では残念でした。古本屋にネット注文した『ヘヤー・インディアンとその世界』が届くのを待ちましょう。